研究実績の概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)は、原子分解能像を得るのみならず、原子を一つ一つ動かす原子操作や原子スイッチが可能である。一方で、原子間力顕微鏡(AFM)により、単一分子の分子骨格が画像化されるなど進展が著しい。研究代表者は、4つのSi原子が傾いて結合したSi4原子スイッチを作製し、世界で初めてSTMのトンネル電流とAFMの化学結合力の両方で同時に原子スイッチさせることに成功した [論文Nano Letters]。本研究計画では、Si4原子スイッチ同士や分子と連動させて、それらの電子状態をSTMで結合状態をAFMで、さらに電気伝導状態をSTPで可視化することを最終目標とした。 【装置改造1:力と分子骨格計測のためのAFM化】半年かけて装置全体を他大学に移設し、超高真空状態の達成、コントローラーをはじめとするすべての電極の接続を確認した。まずは室温において超高真空中でナノスケールの像を得ることに成功した。加熱によりSi基板を清浄化し、7x7表面の形成を確認するRHEEDの設置を完了させた。これにより、室温でのSTMの立ち上げが完了し、本研究計画に必要な80Kでの低温測定およびAFM化への下地が全て整った。 【計画1-1:連動する双子Si4-Si4原子スイッチをAFMの力で原子スイッチする】研究の基盤となるSi4単体のAFMによる原子スイッチの研究成果が、日本物理学会誌にされた。その過程で、双子Si4-Si4原子スイッチの研究に関する解析と考察を最終段階まで進め、論文の執筆が進んでいる。絶縁体であるTiO2基板上のSrTiO3-r13xr13表面においてSTMの電流誘起の新しい原子スイッチを発見た。これは絶縁体上としては稀な原子スイッチと言え、国際学会2件を含む学会3件で発表され[ICSPM29,日本表面真空学会,ALC'21]、国際学会において発表賞を受賞した[受賞ALC'21]。
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