研究課題/領域番号 |
17K19058
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
水口 佳一 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50609865)
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研究分担者 |
斉藤 光史 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (70452092)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導 / 単結晶 / 強磁場測定 / 輸送測定 / デバイス化 |
研究実績の概要 |
本研究では,巨大ラシュバ効果をBiCh2系層状化合物において探索するために,REOBiCh2型の結晶構造を持つ系に着目する.REO1-xFxBiCh2の結晶育成と物性評価,強磁場中輸送特性評価を行う.量子振動の観測を目指し,その解析あkら組成の変化によるスピン軌道相互作用の変化を解明することを研究目的とする. 初年度は,LaO1-xFxBiSSe単結晶の育成と,基礎物性評価を行った.x = 0.1~0.5の仕込み組成においてフラックス法を用いて結晶育成を行い,良質な単結晶を得ることに成功した.フラックスとしてCsClを用い,真空石英管中で結晶育成を行った. また,LaO1-xFxBiSSe系の基礎物性を理解するために多結晶試料の測定も併せて行った.低温での磁化率および電気抵抗率測定,結晶構造解析,組成分析を行った.また,東北大金属材料研究所の強磁場センターにて,x = 0.1と0.3の単結晶の強磁場中輸送特性測定を行った.0.5 K以上の温度領域で,15Tまでの磁場を印加して単結晶の輸送特性を評価した結果,x = 0.1に対する測定に成功し,磁場―温度相図を解明した.また,面内および面間の超伝導異方性を検討した結果,x = 0.1の試料では面間だけでなく面内にも超伝導異方性があることが分かった.次年度はこれらの単結晶においてさらに精密な測定を実現するために,微細加工技術を用いた測定試料作製を行い,目的である量子振動観測を目指す. 上記の結晶育成および物性評価と並行して,PrO1-xFxBiS2単結晶の超薄膜化とデバイス化も進めている.現時点で,超薄膜化に成功し,端子設置のためのマスク作製を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LaO1-xFxBiSSe単結晶育成にあらたに成功し,超伝導特性が良好であることを確認できた.また,強磁場中測定を学内および共同利用(東北大金研)で開始できており,研究目的である量子振動観測に近づいていると考えている. また,PrO1-xFxBiS2単結晶を用いた超薄膜化に成功しており,微細加工後に強磁場測定を実施する計画である. 以上,計画時点で想定していた研究内容の半分程度が実現していると判断し,おおむね順調に進展していると報告する.
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今後の研究の推進方策 |
研究に用いる単結晶組成はLaO1-xFxBiSSeとPrO1-xFxBiS2と確定しており,次年度は強磁場測定を3種類の試料[(1)単結晶,(2)超薄膜化した試料,(3)FIBで微細加工した単結晶]に対して行う.量子振動観測を目指し,得られたデータの解析からスピン軌道相互作用の大きさを評価する.特に,BiS2系とBiSSe系の違いやキャリア濃度の違いによるスピン軌道相互作用の大きさの変化を解明し,巨大ラシュバ効果発現の糸口を見出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
単結晶試料を育成するための原料について,当初は数種類の希土類を用いる計画だったが,LaおよびPrで本研究遂行が可能であると判断したため追加購入は行わなかった.一方,東北大金研の強磁場施設を共同利用し始めたため,次年度の出張実験費として127506円を繰り越し,利用する計画である.
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