研究実績の概要 |
本研究はR(O,F)BiCh2層状化合物の単結晶を育成し,量子振動観測を目指し,巨大ラシュバ効果の探索につなげることを目的として推進した. 量子振動観測を目指した磁気抵抗測定のために,R(O,F)BiS2超薄膜デバイスの作製を斉藤が中心となり推進した.R(O,F)BiS2単結晶(R = Pr, Nd)を剥離法により劈開し,電気抵抗測定用デバイスの作製を行った.2018年度末にデバイス作製に成功したが,超薄膜化した結晶表面に端子を作製する手法の確立に時間を要したため,磁場中測定は今後行う計画である. バルク単結晶での量子振動観測および新奇な物性の探索を目指し,水口が中心となり強磁場中物性評価を推進した.特に良質な結晶が得られたLa(O,F)BiSSeバルク単結晶に関して,強磁場中での磁気抵抗測定を行った.これらの単結晶は低温で超伝導を示すため,東北大金研の共同利用として磁気抵抗測定を推進した.結晶のc軸方向に電流を流し,25 Tまでの磁気抵抗測定を行った.その結果,La(O,F)BiSSeバルク単結晶においては量子振動が観測できなかった.量子振動観測に向けた測定は,上述の通り,超薄膜デバイスを用いた磁気抵抗測定を今後進める計画である. 一方,La(O,F)BiSSeバルク単結晶において特異な磁気抵抗の面内方向異方性を見出すことに成功した.本系は転移温度3.8 Kの超伝導体であるが,2軸ローテータにより様々な方向から磁場をかけ,磁気抵抗異方性を測定したところ,Bi-Ch伝導面内に結晶構造の回転対称性(正方晶のため4回回転対称)を破った2回回転対称性を見出した.この現象は近年注目を集めているネマティック超伝導状態と類似しており,本現象についても今後詳細に解明する予定である.
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