本研究の目的は,胡らによって提案された蜂の巣状に配列された誘電体のトポロジカルフォトニック効果を,実験的に確認することにある.この構造の作製には,ナノスケールでの結晶のサイズと配列の制御が必要となるが,連携研究者の岸野が開発した窒化物半導体ナノコラムは,まさしくこの条件を満たしているため,この研究に取り掛かった 2018年度までに,規則配列ナノコラムの配列ゆらぎの影響を調べ,フォトニックとランダムのクロスオーバーの研究を行った.配列ゆらぎの大きさが,集団応答にどのように影響するのかを,実験的に検証した.InGaN/GaNナノコラム集団を強励起すると,誘導放出現象が観測されるが,ゆらぎが大きくなると,フォトニックレーザーから,ランダムレーザーに移行していく様子が,実験的に確認された. 2019年度は実際にトポロジカル構造での実験に取り掛かる予定であったが,2018年度から2019年度にかけて,実験室の改修工事・引越しなどが重なり,十分な研究成果をあげることはできなかった.そのため,トポロジカルに向かう前段階として,InGaNナノコラムの局在励起子からの発光について詳細に調べ,励起子物性と発光特性の関連を解析した.これに関してはある程度の成果が得られ,現在論文を投稿中である. また,トポロジカル効果を使ったレーザー発振を実験的に解析する際に,物性研究で用いる励起相関分光法が有効であるという考察を行った.そのため,まず励起相関分光法の確立を目指し,我々が物性と良く知っている材料系(無機有機ハイブリッド2次元構造)を用いて,その確認を行った.材料系は異なるが,本年度の学会発表はこの1件である. トポロジカルフォトニック効果に関しては直接の大きな成果が得られなかったが,この研究は,より大きな研究プロジェクト(JST・CREST)に繋がったため,十分意義のある研究だったと考えている.
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