研究課題
2017年度:CoまたはNi表面上のグラフェンとh-BNの磁気近接効果の研究を行った。その結果、グラフェンとh-BNの何れも同様にスピン偏極することが知られた。第一原理計算により、上の結果はグラフェンとh-BNの何れもCoやNiと強く混成するため、前者ではDiracコーンが破壊され、後者ではバンドギャップが消失し、CoやNiの電子状態が支配的になるためであることが分かった。CoやNiを用いる限り、グラフェンのDiracコーンとh-BNの絶縁性を維持することは困難であり、デバイス開発ではこれらの事情を考慮すべきである。上の結果は、米国物理学会誌に論文掲載された。2018年度:ホイスラー合金Co2FeGa0.5Ge0.5(CFGG)によるグラフェンへの磁気近接効果を調べた。その結果、ポジトロニウム生成量がCoやNiの1/4以下であること、表面スピン偏極率が殆どゼロであることが知られた。第一原理計算により、弱いファンデルワルス力のためにCFGGとグラフェンの層間距離が長くなり、その空隙に陽電子がトラップされることでポジトロニウム生成が抑制されることが解明された。また、グラフェンとCFGGの混成が弱いために磁気近接効果も低減されることが明らかになった。CFGG表面上のグラフェンは磁性体になることはないため、バイアス下でのスピン注入や縦型スピンバルブへの展開が期待される。上の成果は米国物理学会誌への論文として投稿された。2019年度:トポロジカル絶縁体のBi2Se3とBi2Te3における電流誘起スピン偏極効果の観測を行った。電流密度を最大1E+5 A/cm2まで、試料温度を10Kから室温まで変化させてみたが、表面電子のスピン偏極を示す結果は得られなかった。これよりBi2Se3とBi2Te3表面に誘起されるスピン偏極率は、最大でも0.1%以下であると結論された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Acta Physica Polonica A, 137(2020)105-108.
巻: 137 ページ: 105-108