研究課題/領域番号 |
17K19062
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
島田 敏宏 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10262148)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 赤外分光 / メタマテリアル / 疎性モデリング |
研究実績の概要 |
本研究では、呼気分析による健康診断や植物工場でのエチレン・CO2などの濃度管理に用いる小型の高感度の気体分子濃度測定器を開発することを目的とする。本提案は、光源の波長範囲を狭くすることにより、フーリエ変換ではなく離散的なカーブフィッティングを用いることが可能なはずだという着想に基づいている。最近のデータ科学の進展に伴い、鋭い離散的な信号に対するカーブフィッティング法が進化している。それは、最小二乗法に非ゼロに対するペナルティを入れた評価関数を用いるもの(LASSO回帰)等である。この「疎性モデリング」の考え方は電波望遠鏡やMRI-CT画像などの高解像度化に威力を発揮している。これを適用して赤外分光計を作るアイデアを検証するのが本研究の目的である。測定の原理に立ち返り、光源と解析法を工夫することにより、大型となる理由である干渉計の可動鏡の動作範囲を大幅に小さくする。これにより干渉計を微細加工による機構(micro electromechanical systems; MEMS)に置き換えることが可能になる。以下の4項目について研究を行った。(1)フィッティングアルゴリズムの開発(2)メタマテリアルの概念を用いた光源開発(3)干渉計の製作(4)濃縮機構開発。まだ萌芽的な原理検証であること、特許申請を考えていることから、対外発表はしていない。出願が終わった段階で論文にしていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は原理実証のための研究が目的である。開発する4つの要素技術に関する平成29年度の実行状況は下記の通りである。 (1)フィッティングによる干渉計データの赤外吸収スペクトルへの変換アルゴリズムについては、MATLABライブラリの使用から自前のソフトウェアへの移行を行った。 (2)メタマテリアルの概念を用いて発光波長を制御した中~遠赤外光源の開発については、材料探索を行い、超高温材料として知られるYb2Si2O7と炭素およびタングステンの積層膜に関する実験及びパターニング実験を行った。今後は、波長範囲を定めた赤外光源としてのメタマテリアル構造を設計・製作する。 (3)干渉計の製作については、電磁アクチュエータを利用して試作を行った。現在動作検証中である。干渉計のMEMS化については、作製方法を検討中である。 (4)感度向上のための気体分子の冷却濃縮機構の小型化については、最近積層ペルチエ素子の市販品が出たので、その利用を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2年の計画であるため、今年中に原理実証を行う必要がある。下記のように計画している。 (1)干渉計データからスペクトルへの変換アルゴリズムは、パソコンベースでは可能になった。余裕があれば高速化および独立した装置にすることに役立つFPGAの開発を行う。 (2) 光源の開発については、現在設計を進めているが、3次元的なメタマテリアルの製作が必要となる可能性が高い。厚い透明膜の積層のためにミストCVDを導入して高速成膜を行う方法を開発する。積層構造により目的とする波長範囲のみでできるだけ一様なスペクトルが得られる光源を設計・製作する。 (3) 干渉計については、現在試作品の性能検証と改良を進めているところである。MEMS化についても早期に実施を行う。 (4) 冷却・濃縮機構の小型化については、価格について可能ならば市販品を利用する方向を考えている。干渉計自体に濃縮機能を持たせることも検討している。
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