本研究では、呼気分析による健康診断や植物工場でのエチレン・CO2などの濃度管理に用いる小型の高感度の気体分子濃度測定器を開発することを目的とした。本研究では、測定の原理に立ち返り、光源と解析法を工夫することにより、大型となる理由である干渉計の可動鏡の動作範囲を大幅に小さくする。これにより干渉計を微細加工による機構(micro electromechanical systems; MEMS)に置き換えることが可能になる。 本研究は原理実証のための研究が目的であり、開発する4つの要素技術に関する研究を行ってきた。(1)フィッティングによる干渉計データの赤外吸収スペクトルへの変換アルゴリズムについては、MATLABライブラリの使用から自前のソフトウェアへの移行を行った。(2)メタマテリアルの概念を用いて発光波長を制御した中~遠赤外光源の開発については、材料探索を行い、超高温材料として知られるYb2Si2O7等と炭素およびタングステンの積層膜に関する実験及びパターニング実験を行った。2次元プロセスは可能となり、FTIRの光源部分を用いた評価もおこなった。現在、三次元厚膜積層の方法を探索している段階である。(3)干渉計の製作については、電磁アクチュエータを利用して試作を行った。干渉計のMEMS化については、文科省ナノテクプラット等を用いた自分での製作を検討したが、実験の結果自力での製作は断念し、外注委託を行っている(2019年3月の段階で外部試作中)。(4)感度向上のための気体分子の冷却濃縮機構について試作を行った。実用化のための企業との連携もはじまっており、まず有効性の高い特許を取得し、それから論文発表する方向でデータ・ノウハウを蓄積している。
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