本研究の目的は,oscillation death(OD)を利用した熱音響自励振動の抑制手法の確立である.ODは,自励振動子間の相互作用が引き起こす現象の一つであり,振動の完全な停止(振動死現象)を意味する.燃焼ダクトをもつ機器では,熱的に誘起される気柱の自励振動である熱音響自励振動がしばしば生じる.この現象は機器の正常な運転を阻害するために,抑制方法の確立が望まれている.本研究の目的はODを利用して,できるだけ簡単な方法で熱音響自励振動を停止する方法を確立することである. 平成30年度の研究では,レイケ管型の燃焼振動系を,気柱管で接続することにより時間遅れ結合を実現し,振動抑制を実証する実験を行った.燃焼振動子には平成29年度に作成し特性評価を済ませた実験系を使用し,接続する気柱管の太さと長さをパラメータにとって接続後の振動振幅および振動周波数を計測した.1本の気柱管でのみ結合する場合,より太い管で結合した場合に同相同期および逆相同期が観測されたことから,管の太さによって相互作用の強さが増強することは示されたが,振動停止には至らなかった.また 2本の気柱管で接続する場合には,管長が自励発振する音波の波長の半波長および一波長の組み合わせのときにODが観測された.これらの結果を燃焼振動系に対して提案されているモデル方程式に基づいて考察を行い,結合強さは管の太さのみで決まるわけではないことが示された.また,予混合型の燃焼振動系装置を作成し,レイケ管型よりもかなり強い燃焼振動の発生を確認した.なお発振を左右するパラメータ(空燃比,流量,結合方式,共鳴管条件)がかなり多いことから,発振条件を系統的に探ることを中心的に行った.
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