研究課題
シリコン結晶内電子の100~1000倍という驚異的な面内移動度を示すグラフェンであるが、グラフェン担持基板との相互作用が強いため、本来のきわめて優れた物性がデバイス特性として引き出せていない。とくに実用化グラフェンFET用として期待の高い炭化ケイ素基板上エピグラフェンでは、炭化ケイ素基板とグラフェンとの界面にある界面層によってクーロン散乱が発生し、移動度が減少することが知られている。昨年度は炭化ケイ素基板上EGに大気中マイクロ波熱(micro-wave annealing: MWA)処理を初めて適用し、同法により擬自立化エピグラフェン(Quasi-free-standing Epitaxial Graphene:QFSEG)が簡便に形成可能であることを実証した。QFSEGの形成は低速電子線回折(LEED)、断面透過電子顕微鏡(XTEM)、ラマン散乱分光により確認された。このうちラマン散乱分光からは、同処理により単層グラフェンが2層グラフェンに欠陥導入なしに変化することが明らかとなったが、これは処理前の界面層がグラフェンに変化したと考えることで合理的に理解される。ラマン散乱分光からはグラフェンの圧縮歪が40%減少することが明らかとなったが、これは界面層の消失により、グラフェンとSiCの間の強いσ-結合が弱いファンデアワールス結合に変化したことを意味する。一方、光電子内殻分光の結果からは、炭化ケイ素表面が酸化されていることが明らかとなった。本年度はさらにグラフェン評価を進め、光電子内殻分光より、MWA処理によりバッファ層の消滅を確認することが出来た。また角度分解光電子分光より、同処理によりそれまでのN型伝導がP型伝導に変わる事を明らかにした。移動度は従来報告と同じ650 cm2/Vs程度に留まったが、プロセス時間が従来法より一桁短くて済むことが明らかになった。
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Sensors and Materials, (accepted, 2019).
巻: 31 ページ: 印刷中