研究課題/領域番号 |
17K19072
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
富田 康生 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50242342)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 応用光学・量子光工学 / 磁性ナノ微粒子 / ナノコンポジット材料 / ホログラフィック格子 / 中性子光学 |
研究実績の概要 |
本研究は、熱中性子の波長より1桁以上長い波長(1~10nm オーダー) を持つ冷・極冷中性子ビームのスピン偏極制御をホログラフィーの手法によりコンパクトで柔軟に実現することを目的とする。 昨年度の研究実績を以下に示す。 1.超常磁性ナノ微粒子であるマグネタイト(Fe_3O_4)をトルエン中に分散した磁性ナノ微粒子ゾルを多官能アクリルモノマーと1官能イオン液体モノマーの混合モノマー中へ一様分散するための分散条件について究明した。その結果、多官能アクリルモノマーと1官能イオン液体モノマーの混合を適切に調整することで、磁性ナノ微粒子濃度3.7vol.%までの分散を世界に先駆けて実現した。 2.磁性ナノ微粒子の分散濃度計算には磁性ナノ微粒子表面に修飾されたオレイン酸が占める体積を考慮することで磁性ナノ微粒子分散量の体積分率値を得た。 3. 上記分散条件において光重合性磁性ナノ微粒子分散コンポジットフィルムを作成し、波長532nmのレーザーを用いた二光束干渉露光による透過型平面波体積ホログラフィック格子の記録を試みた。その結果、回折効率およびその入射角依存性の測定から飽和屈折率変調振幅が最大0.0017の透過型平面波体積ホログラフィック格子を世界に先駆けて得た。 4.得られた飽和屈折率変調振幅の値とその理論式を基にして、ホログラフィック露光時の磁性ナノ微粒子とモノマーの相互拡散と相分離の程度の指標となる磁性ナノ微粒子密度分布の空間変調量を推定することが出来、その値が飽和屈折率変調振幅0.0017において0.005であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.磁性ナノ微粒子Fe_3O_4の光重合性モノマーへの分散を当初目標としていた10vol.%まで行えなくて磁気測定までには至らなかったものの、3.7vol.%までの一様分散を世界に先駆けて達成出来たこと。 2.光重合性磁性ナノ微粒子分散コンポジットフィルムを作成し、透過型平面波体積ホログラフィック格子の記録を世界に先駆けて実現出来たこと。 3.回折効率およびその入射角依存性の測定から飽和屈折率変調振幅が最大0.0017の透過型平面波体積ホログラフィック格子を得たこと。
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今後の研究の推進方策 |
1.磁性ナノ微粒子Fe_3O_4の光重合性モノマーへの分散濃度を目標の10vol.%まで増加するため、光重合性モノマーの極性を考慮して高濃度分散に適したモノマーを探索する。また、界面活性剤の添加も試みる。 2.ホログラフィック露光での磁性ナノ微粒子と重合モノマーとの相分離をより促進するために、 より高効率な光重合開始剤(例えば、Rose Bengal+NPG)を用いて、磁性ナノ微粒子密度分布の空間変調コントラストを1に近づける。 3.上記1と2の実施により、ホログラフィック露光により形成される透過型平面波体積ホログラフィック格子の光学波長(532nm)での飽和屈折率変調振幅を0.01オーダーまで増大するとともに、その磁気光学特性ならびに磁気特性について究明する。 4.協力研究者のM. Fally教授とJ. Klepp博士により欧州実験施設(Laue-Langevin研究所)において、作成した透過型平面波体積ホログラフィック格子の冷・極冷中性子ビームスピン偏極特性の測定評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
採択通知が昨年6月末でそれからの研究実施であったために、外国から購入する磁性ナノ微粒子ゾルの購入時期が遅れたこと(納入までに1ヶ月以上かかった)、当初目標としていた磁性ナノ微粒子分散濃度(10 vol.%)までに至らなく予定していた磁性ナノ微粒子分散コンポジットフィルムの磁気光学および磁気的測定のための予定物品購入ができなかったことが翌年度への繰越しの主な理由である。翌年度は、国際会議での発表(採択済み)および協力研究者のM. Fally教授とJ. Klepp(ウィーン大)との研究打ち合わせのための旅費に加えて、磁性ナノ微粒子分散濃度を10 vol.%程度まで増加させて磁気光学および磁気的測定のための予定物品購入を行うとともに研究のより効率的な遂行のため研究員の雇用を行う予定である。
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