研究課題/領域番号 |
17K19083
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野上 修平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00431528)
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研究分担者 |
芹澤 久 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (20294134)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 粒子法 / 微視強度解析 / き裂発生 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、微視強度計測技術による実験的アプローチと、最新の計算技術であり、き裂発生シミュレーションに適した粒子法を融合させることにより、従来困難であったき裂発生の予測とそのモデル化を目的としている。平成29年度は、粒子法によるき裂発生シミュレーションを実施するための計算機やソフトウェアなどの計算環境の整備と、対象とする材料の見直しのため、各種金属材料のき裂発生の評価を実施した。粒子法による計算は、その代表的なものであるDEM(Distinct Element Method)法とMPS(Moving Particle Semi-implicit)法の適用可能性について検討し、DEM法を用いた試計算では、き裂発生のシミュレーションに成功した。DEM法による計算には汎用ソフトウェアであるLS-DYNAを使用し、MPS法による計算には大阪大学接合科学研究所で開発されたソフトウェアを使用した。次年度以降、材料の基本的な力学特性に関わる物理定数や、実験により得られるき裂発生に関わるパラメーターを計算に組み込み、き裂発生のシミュレーションの精度を向上させる予定である。微視強度解析技術によるき裂発生試験の対象材料として、オーステナイト系およびマルテンサイト系の鉄鋼材料や、微細組織が鉄鋼材料に比べシンプルで、室温でもき裂発生させやすい材料としてタングステンを候補とし、それらの予備試験を実施した。その結果、き裂発生の安定性などを考慮し、当初計画どおり鉄鋼材料で研究を進めることとし、まずは、マルテンサイト鋼を対象とすることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粒子法によるき裂発生のシミュレーションは実例が非常に少なく、実績ベースの取り組みができないため、発散の回避や計算時間の適正化など、基本的な計算条件の抽出に多くの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、マルテンサイト系の鉄鋼材料を用いて、電子顕微鏡内でその場観察が可能な超小型試験片による微視強度計測技術を適用し、パケット境界、ブロック境界、旧オーステナイト粒界などのサイトにおけるき裂発生挙動を明らかにする。試験片は収束イオンビーム装置を用いて製作する。試験は同じ条件において複数実施し、再現性を評価の上、粒子法による計算に組み込むためのき裂発生に関わる物理定数を導出・決定する。これと並行して、平成29年度の取り組みでは不十分であった粒子法によるき裂発生シミュレーションのモデルの適正化をさらに進める。現状は、計算時間が長く、また収束しない場合もあるため、ズーミング解析の適用などにより、この課題を解決する。その後は、実験で得られたき裂発生に関わるパラメーターと、材料の基本的な力学特性に関わる物理定数を粒子法の計算に組み込み、き裂発生のシミュレーション計算を実施する。このシミュレーション計算の結果と、超小型試験片による試験結果を相互比較し、それを基にシミュレーション計算を改善することにより、シミュレーションの精度を向上させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
超小型試験片による試験が十分に実施できなかったため、消耗品費や旅費(試験は所属機関とは別の機関において実施)の使用が計画よりも少なくなった。平成30年度にも同試験は実施予定のため、そのための消耗品費や旅費に使用する予定である。
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