本研究の目的は,トレーサーデータに基づいた持続的な地熱フィールド設計であり、地熱開発で利用可能なネットワークモデルの開発に挑戦する。本研究の研究課題は、(I)非整数階微分モデルを組み込んだ井戸間き裂ネットワーク解析モデルの開発 (II)解析モデルの可視化 (III)柳津西山地熱フィールドへの適用 (IV)柳津西山地域における還元設計の提案である。本年度は、研究課題(I)非整数階微分モデルを組み込んだ井戸間き裂ネットワーク解析モデルの開発、および(II) 解析モデルの可視化に取り組んだ。 研究課題(I)では、トレーサー移動と熱移動とを組み合わせた井戸間のネットワークモデルについて検討した。まずは、一対の井戸間に対し、流体が流路内の外部に流出、外部から流入する場合に対応するモデルを作成し、数値計算結果でその妥当性を示した。また、温度応答を用いることで、流路内の表面積を推定した。この手法については、数値計算ならびにトルコ Balcovaフィールドの実データを用いて妥当性を検証した。これにより、地熱開発において持続可能なフィールドデザインに必要不可欠な、熱供給に関与する地下構造を推定できる可能性を示した。研究課題(II)では、Balcovaフィールドの流路表面積の可視化を行った。その結果、理にかなった推定ができていることが示され、感覚的にもわかりやすい結 果の表示方法であると言える。また、新たにエラー解析について検討し、計測エラーやモデルエラーから生じる予測誤差について議論ができるモデルを考案した。研究課題(III)(IV)では、企業より柳津西山地熱フィールドのデータを提供してもらい、データ解析を行い、議論を進めることができた。
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