研究課題/領域番号 |
17K19088
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
瓜谷 章 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10213521)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 中性子 / 熱外中性子 / エネルギースペクトル / 共鳴 / ボナー球 |
研究実績の概要 |
マイクロボナー検出器の設計のために、モンテカルロシミュレーションコードPHITSを用い、各検出器要素の応答関数を評価した。特に熱外中性子領域に感度を持たせるため、共鳴吸収ピークを有するAu、In、Mn、W、Ni箔でポリエチレン減速材周囲を覆うことで、数eVから数keVまでの範囲に特徴的な応答を示す検出器要素を用意できる見通しを得た。また、純粋なポリエチレン減速材でなく、ボロン入りポリエチレン減速材を用い、厚さの異なるものをいくつか利用することで数keVから数100 keVの領域で感度を持つものが準備できる見通しを得た。これら、両者を組み合わせることで、BNCTで重要となる数eVから数100 keVの領域をカバーできるスペクトロメータを実現できると期待できる。 また、測定場に与える擾乱について、従来のボナー球スペクトロメータで用いられる直径20 cmのポリエチレンと比較を行った。今回考案しているマイクロボナースペクトロメータでは、減速材寸法は最大でφ30×30 mmの円柱であり、この検出器要素を、代表者の別途進めているBNCT用加速器中性子源の照射場に設置することを仮定し、モンテカルロシュミレーションで中性子場に与える影響を評価すると、従来のボナー球と比べ1/10以下であることが確認された。 さらに要素検出器を試作し、京都大学原子炉実験所原子炉重水照射設備にて応答評価試験を行った結果、109 n/cm2/sオーダーの高強度中性子場においてお正常動作を確認し、中性子感度も10-7 cm2のオーダーで、BNCT中性子場においても十分出力線形性が保てることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロボナースペクトロメータの要素検出器に関して、応答関数評価シムレーションを行い、BNCT照射場の中性子スペクトルを推定するために必要な数eVから数100 keVのエネルギー領域に感度を有する要素検出器群を準備できる見通しが得られた。加えて、照射場に与える擾乱に関しても、モンテカルロシミュレーションによる評価を行い、従来型のボナー球スペクトロメータと比して一桁小さくできることが確認された。 試作要素検出器を作製し、実際に、京都大学原子炉実験所原子炉重水照射設備においてその基礎特性を評価した結果、実際のBNCT照射場において十分な出力線形性を確保するために必要な10-7 cm2のオーダーの中性子感度が得られることが確認された。 以上、計画に挙げていたシミュレーションによる応答関数評価および試作要素検出器による動作確認及び基礎性能評価を完了しており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度進めた要素検出器の設計結果に基づき、スペクトロメータとしての検出器構成を最終決定し、それを元にプロトタイプスペクトロメータの製作を進める。同時に、各々の要素検出器の応答評価試験を進めると共に、プロトタイプスペクトロメータを用いて、代表者が別途開発を進めているBNCT用加速器中性子源の照射場にて、スペクトル評価試験を実施する。また、必要に応じて、産業技術総合研究所の標準単色中性子場において要素検出器の応答確認試験を実施する。
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