まず始めに、マイクロボナー検出器の設計のために、モンテカルロシミュレーションコードPHITSを用い、各検出器要素の応答関数を評価した。特に熱外中性子領域に感度を持たせるため、共鳴吸収ピークを有するAu、In、Mn、W、Ni箔でポリエチレン減速材周囲を覆うことで、数eVから数keVまでの範囲に特徴的な応答を示す検出器の設計と、いくつかのプロトタイプ検出器を製作した。このプロトタイプ検出器の動作試験ならびに応答評価試験を、京都大学複合科学原子力研究所の原子炉重水照射設備において行い、本プロトタイプ検出器はBNCT中性子場においても十分出力線形性が保てることを確認した。 一方、これらの一連の特性評価実験を通して、有限個数のボナーボールを用いたスペクトル測定では、得られる中性子スペクトルの精度に限界があるとの知見を得た。そこで、水などの液体減速材中で減速された熱中性子分布を、光ファイバーの先端に極小中性子用シンチレータを配した高空間分解能を有する中性子検出器で測定し、その分布形状からアンフォールディング手法を用いて中性子のエネルギースペクトルを得る手法についても並行して検討を行った。その結果、この液体減速材を用いる手法の方が、特に熱外領域などの低エネルギー中性子に対しては、より正確なスペクトル評価が得られる可能性があるとの知見を得た。試作機を作製し、実際にBNCTの熱外中性子場において測定を行い。中性子スペクトルが得られることを示した。
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