研究実績の概要 |
今年度は昨年度実施予定であった、フランスIPN-Orsayを訪問し、巨大クラスターイオン慣性核融合シナリオに関する講演と、共同研究についての進捗、今後の研究の方向性についての議論を行って来た。日本側の独自構想の理解は深められたはずである。一方、昨年度の研究分担者等の訪問の際議論された巨大クラスターイオン源の開発について、研究現場への訪問を通じ、相当に時間を要する事を認識した。一方、巨大クラスターイオンに対する核融合標的表面材料の持つストッピングパワーについて、これまでの認識に加え、崩壊イオンのクーロン爆発による追加速現象と謂う新たな知見を考慮した標的物理、標的設計の必要性が認識された。 分担研究者がそれぞれ進めている研究中身についての総合的議論を年度末にTV会議に実施した。この中で、バンチ圧縮の手法が複数検討されていたが、一番合理的手法(主リング内での複数誘導加速セル時間差起動による位相回転)についてコンセンサスを得た。このシナリオ実現のために、前年度設計された4階対称主リングの周長を3kmから4kmに拡大した10階対称双方向多重構成誘導加速シンクロトロンが改めて設計し直された。 この3年間の研究成果として最終的に到達した巨大クラスターイオン慣性核融合シナリオの全貌を記述する論文(K.Takayama et al.,"A Quantum Beam Driver for High-Energy-Density Physics and Future Inertial Fusion", submitted to Phsy. Lett. A)が完成した。このシナリオをベースに、ドライバー加速器個々の詳細設計・解析が出来る様になる。このレビュー論文で言及していないバンチ長10nsec、100個のビームを等方的に照射するバレル形状核融合標的設計に向けた明確な前提を提示した。
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