本研究の目的はメタン菌の持つメタン生成補酵素を電気化学的に制御し触媒として用いることで、微生物の機能の一部を切り取り応用するというクリーンでグリーンな革新的バイオガス生産システムを創製することである。、究極的には「太陽エネルギーを化学エネルギー(メタン)へ変換する技術」の創出を目指す。 昨年度までに、メタン生成補酵素の電気化学的活性化法を開発し、さらに開発した手法を用いて実際に生体内基質であるメチルS-CoMだけでなく、ジメチルスルフィドやメトキシベンゼンなど、様々なメチル化合物からのメタンおよびエチレン生成に成功した。 当該年度では、昨年の課題であった、「メタンおよびエチレンの生成メカニズムの解明」のために、13Cメチル-S-CoMを合成したものをメタン化基質として用い、還元剤により活性化したメタン生成補酵素と反応させる「化学的メタン生成実験」を行った。また、より長鎖のアルキル化合物に対する活性化したメタン生成補酵素の作用を調査するために、エチル-、プロピル-、ブチル-S-CoMを合成し、同様に化学的炭化水素化実験を行った。しかしながら、合成したこれらの基質ではいずれも炭化水素ガスが発生せず、結果が得られなかった。市販されているメチルS-CoMでは正常にメタンが発生するが、合成品では発生しないことから、いずれかに不純物がメタン化を阻害あるいは加速していると考えられた。 一方、電気化学的メタン生成実験では、合成したエチル-、プロピル-、ブチル-S-CoMを炭素基質に用いたアルカン化に成功した。これにより、メタン生成補酵素はメチル化合物だけでなく、より長鎖のアルキル化合物を基質して作用できることが明らかになった。 研究期間全体を通して、メタン生成補酵素の未知機能が明らかになり、バイオガス生成システムとしてもより広範囲の炭素基質を応用可能になり、実用性が向上した。
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