研究課題
本年度は、界面における時間分解分光の基礎となる、界面における分子配向と振動和周波発生(VSFG)信号の関係の検討を行った。一つ目は、これまでのホモダイン検出法では得られなかった、キラルVSFG信号の符号と、分子配向を結びつけるために、分子の超分極率を量子化学計算で求めた双極子モーメントとラマンテンソル成分から計算し、信号の符号を検討した。その結果、逆平行βシート構造のアミドI信号について、βシートが界面に対して平行であるときに正のキラルVSFG信号が得られることを見出した。これは、これまでに実験においてタンパク質水溶液界面において得られている1630 cm-1付近のアミドIバンドの正の符号と対応していると考えられる。二つ目は、キラルVSFG信号の由来を容易に決定する手法として、VSFG信号光・可視光・赤外光の偏光組み合わせを利用することを発案し、実験的にそれを確かめた。キラルVSFG信号はバルク相からも界面からも発生しうるが、反射配置での測定においては、界面からキラルVSFG信号が発生している場合、P偏光VSFG、 S偏光可視光、P偏光赤外光のPSP偏光配置と、SPP偏光配置の強度比がほぼ等しくなることをフレネル係数などの計算から見出した。一方、バルク相から信号が出て居る場合、SPP偏光配置で得られる信号がPSP偏光配置で得られる信号よりも著しく小さいことを見出した。さらに、反射配置だけでなく透過配置においても、これらの偏光配置依存性を計算した。実験的に、数10 nmの厚みを持ったポリ乳酸薄膜を測定し、界面からキラルVSFG信号が発生していることを偏光配置から見出した。一方、バルク相から信号が発生することが知られているリモネン純液体については、それに対応した信号の偏光依存性が実験的に得られた。
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The Journal of Chemical Physics
巻: 149 ページ: 244703~244703
doi.org/10.1063/1.5063290