研究課題/領域番号 |
17K19099
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平松 光太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60783561)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | レーザー分光 / バイオイメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、光を用いた磁気共鳴分光測定法を開発することを目標とする。それにより従来のマイクロ波を用いた磁気共鳴分光法に比べ数桁程度高い空間分解能 をもたせ、最終的には細胞内分子動態や材料中の物性評価へ応用することを目指す。 本年度は,昨年の開発をベースとして、均一サンプルからの磁気共鳴信号取得及びバイオイメージングへの応用を試みた。光源として用いる繰り返し周波数1GHz,中心波長800 nmのチタンサファイアレーザーを2つに分岐し、一方を2つの音響光変調器を用いて8.45MHzから8.55MHzの範囲で周波数変調した。光学遅延を調整したのちに2つのパルスを重ね合わせて所望の周波数変調が得られていることを確認した。また、非線形光学結晶へと照射することでパルス間の時空間的な重なりを確認し、有機分子のプロトンからの信号取得を試みた。しかしながらこれまでのところ再現性のよい信号は得られていない。 一方で、バイオイメージングへの応用として、超短パルスレーザーを光源として用いたpump-probe型の時間領域振動分光イメージング法の開発も並行して実施した。約20 fsのパルス幅のチタンサファイアレーザーからの出力を2分岐し、パルス間の遅延をレゾナントスキャナを用いた光学系で高速に走査したのち顕微鏡下に静置したサンプルに照射し分子振動の時間領域測定を試みた。また、入射ビーム角をガルバノスキャナで高速に走査することで各点からの振動分光信号を取得し、顕微イメージングを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では2018年度に磁気共鳴信号の取得を予定していたが、十分な信号が得られていない。今後さらなる装置の安定化を行い信号取得を試みる。 一方で、バイオイメージングのための装置開発は順調に進行し、分子の振動情報という別の物理量ではあるが、顕微鏡下での高速イメージング測定に成功した。本結果はそれ自身バイオイメージングの手法として興味深いものであったので、論文投稿(Journal of Raman spectroscopy誌)し、採択された。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していたレーザーを用いた磁気共鳴信号の取得に至らなかったため研究期間を1年延長して研究を遂行する。2019年度はさらなる光源の安定化を行うとともに、別の測定手法も検討しつつ信号取得を目指す。また、条件検討のために強い信号を生じるサンプルの探索も同時に進める。 また、2018年度に実施した振動分光情報を用いたバイオイメージングのさらなる高速化、高精度化も実施し、従来法を上回る高速振動分光イメージングの実現も目指して研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度までの研究計画であったが、当初の予想に反し2018年度中の信号取得に至らなかったため、研究期間を2019年度まで延長して実施することとした。信号取得に向けた装置改良やサンプルの入手のために2019年度に180,927円を計上した。
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