(1) デュアルコム分光による核スピン検出に向けた装置開発 コム構造を安定化した2つのTi:Sapphire レーザーを光源として用い,誘導ラマン過程を介した核スピンの計測を目指し,開発を行った.開発したシステムの性能を見積もるために,2つのレーザーからの干渉信号のスペクトルを計測した.干渉信号のフーリエ変換によって見積もられた周波数コムの相対的な線幅は10 Hz 以下であり,将来的に周波数コムを用いて磁気共鳴遷移を測定するのに十分な線幅を有していると考えられる.しかしながら,今回開発した安定化システムによるOFC の安定化では,フィードバック制御が数分程度しか持続せず,OFC を光源とした磁気共鳴測定を行うのに十分ではなかった.今後,更なる装置の安定化などを行い,磁気共鳴信号の取得を目指す. (2) デュアルコムによる振動分光計測の高速・高感度化 レーザーの繰り返し周波数を高速に変調することで超高速のデュアルコム振動分光計測を実現した.モードロックレーザーの励起光強度を高速に制御することにより繰り返し周波数を変調し,パルス間隔が常に振動コヒーレンスの寿命以下となるように制御し,時間領域ラマン分光測定を行う.パルス間隔を2 色干渉(Two-color interferogram: TCI)によってモニターし,測定した時間領域ラマン信号の時間軸の校正に用いた.原理実証として,繰り返し周波数を100 kHz で変調し,トルエンのラマンスペクトルを測定した.時間領域でのCARS信号をフーリエ変換することでトルエンのラマンスペクトルを得た.スペクトル取得レートの向上に加え,測定サンプル数の向上によって,従来のデュアルコムCARS 分光法と比較して13 倍のSN 比での測定が可能になった.
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