研究課題/領域番号 |
17K19103
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小阪田 泰子 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00579245)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線 / ナノ材料 / 制動放射光子 / 光化学 / 発光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者が見いだしたナノ材料でのX線励起発光を発展させ、新しい原理の発見として、高エネルギーの制動放射光子への応答を明らかにすることである。また、効果的な放射線治療の開発へ展開するための基盤を確立する。放射線治療は、外科的な手術や化学療法と共にがんに対する主要な治療法の一つと言える。治療効果の高い放射線治療法の開発が望まれ、その方法の一つに、治療効果を高める「複合的治療法」が挙げられる。特に、光化学反応を用いた手法が注目され、その光励起エネルギー源の可視光発光材料が必要になる。「光化学反応を用いた効果的な複合的治療法の開発」には、まず、放射線治療に用いる数MeV程度の制動放射光子に応答する発光ナノ材料自体の開拓調査が必要と考えた。申請者は、これまでに診断用50 keVのX-rayを励起光源として使用し、ナノ材料を用いたX線励起発光イメージングを実施した。結果、金クラスターやイリジウム錯体含有ポリマーナノ粒子で発光が見られることを明らかにした。一方、診断目的に加え、放射線は治療にも重要な役割を果たす。X-ray撮影に用いる診断用X線のエネルギーは50 keV程度であるのに対し、放射線治療に使われる小型リニアック (LINAC)は、数MeVの制動放射光子を照射する。しかしながら、後者の制動放射光子を用いた場合、生体親和性の高いナノ材料からの発光がどのような材料を用いれば起こるか現時点で知見はない。この発光の知見が得られれば、発光を化学反応の励起エネルギーとした、部位選択的なガス・治療薬の放出が可能になると考えた。今年度は、大阪大学産業科学研究所量子ビーム施設内のLINACのL-バンドからの20 MeV程度の電子線ビームでアルミ金属ターゲット存在下発生する制動放射光子を利用し、発光観察を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大阪大学産業科学研究所LINACを用いた発光観察に向けた予備実験を行った。阪大産研LINACのLバンド (24 MeV)由来の電子線を、ターゲット金属のアルミ板 (5 cm)に照射し、目的とするX線・電子線を発生させた。電子線照射下、デジタルカメラにて、黒色アクリル板に塗布したシンチレーター蛍光粉末 (ニコラ社製#727)の発光を観察した 。その結果、シンチレーターの蛍光体由来の青色可視発光を確認し、概ね計画通りに研究が進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの診断用のX線励起の研究で用いた、金属錯体、金属ナノ粒子等のナノ材料を用いて、発光機構の解明につながる知見を得る。具体的には、イリジウム金属錯体含有ポリマーナノ粒子 (500 nm~700 nm)、金・銀発光性クラスター、金プリズム (-600 nm)、水溶性蓄光ナノ材料 (-500 nm)、ランタノイドアップコンバージョンナノ粒子、ランタノイドカーボンドット (>1000 nm、カッコ内は各々の発光最大波長)の利用を計画している。他療法との組み合わせも考慮し、制動放射光子に応答する、高い水溶性・高発光量子収率・様々な発光波長を有するナノ材料を探索する
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費と論文投稿料を次年度に繰り越したため。
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