放射線治療は、外科的な手術や化学療法と共にがんに対する主要な治療法の一つと言える。現在の放射線治療では、医療用LINACからの数MeVの電子を金属ターゲットに当てて生成するX線や電子線 (以下、制動放射光子)を、4-5回/週の頻度で照射する必要がある。この回数の照射を減らすことができれば、患者への負担が減る。その方法の一つに、治療効果の高い放射線治療法の開発が望まれ、特に選択性という点では、化学反応を用いた光線力学療法 (PDT)や化学療法との組み合わせが重要になる。 申請者はこれまでに、疾病診断に向けた生体深部イメージングを実現するために、硬X線応答可視光発光材料の開発を行った。具体的には、生体親和性の高いポリマー粒子や金クラスターなどのナノ材料が利用できることを見いだした。その過程で、このX線励起により生じた可視光発光を光化学反応に利用し、光線力学療法 (PDT)や化学療法へ応用することに着目した。 本挑戦的研究では、効果的放射線治療法の開発につながる制動放射光子励起発光材料の探索と応用を行った。 産研LINACを用いた発光観察に向けた予備実験を行った。阪大産研LINACのLバンド (24 MeV)由来の電子線を、ターゲット金属のアルミ板 (5 cm)に照射し、目的とするX線・電子線を発生させた。電子線照射下、デジタルカメラにて、黒色アクリル板に塗布したシンチレーター蛍光粉末の発光を観察した。その結果、シンチレーターの蛍光体由来の青色可視発光を確認した。 また、硬X線励起発光の一般性の調査に向け、goldクラスターでの硬X線発光と光化学特性の関係について詳細を調べ、論文にまとめた。
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