研究課題/領域番号 |
17K19104
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 単分子接合 / 熱電変換 |
研究実績の概要 |
1. メカニカリーコントローラブルブレークジョンクション(MCBJ)法を利用した熱起電力測定を行うために必要な、微小ヒーターと温度計を組み込んだ基板を開発した。開発に際し、通常よく用いられる抵抗型の温度センサーではなく、より小型化が可能と期待される極微の熱電対を利用した。テストデバイスのゼーベック係数(S)を測定した結果、バルク素材から予測されるSとは異なる挙動が得られた。このことは、厚みが薄くなるに連れ、電気伝導にともなう電荷の表面散乱などの効果が現れるためと解釈でき、微小熱電対の設計指針として重要である。
2. 前年度に見出したタービリジン鉄錯体のスイッチング挙動に関しエネルギー状態の考察を行い、ターピリジン鉄錯体の酸化還元に伴う電子準位の変化が原因である可能性があるとの結論に至った。ターピリジン鉄錯体の酸化還元準位、電極に用いた金電極のフェルミレベル、さらに電気伝導度のスイッチが観測された電圧との関係をエネルギー図としたところ、ターピリジン鉄錯体の酸化還元準位付近で電気伝導度のスイッチが起きていると推測できた。この仮定を検証する実験を行うため、電気化学制御をおこなえるMCBJ測定装置の開発に着手した。
3. 低温下で各種オリゴチオフェンの電流電圧特性を測定し、1準位共鳴トンネルモデルで解析することにより、電子状態を明らかにした。この結果、オリゴチオフェンのねじれにより電子状態が変化するという理論モデルと一致する結果を得た。この結果から、単分子接合の電流電圧特性が単分子接合の電子状態の解析に有用であることが明らかになり、ゼーベック係数の直接測定の他にもゼーベック係数を見積もる手段として利用できる可能性が示された。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・予定していたSTM型のブレークジャンクションによる熱起電力測定が困難な状況となり、測定が十分に行えなかった。 ・無機材料との複合分子層の作成に着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
・金属錯体単分子接合の熱起電力測定を確実に行う。 ・電気化学制御下での実験を行い、錯体の電子状態を制御した状態でコンダクタンスを決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
より精度の高い位置センサ内蔵型圧電素子の購入を検討していたが、現在持っていた機材でのテストの結果を受けてから検討することとした。
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