研究課題/領域番号 |
17K19105
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小堀 康博 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (00282038)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 植物光合成 / 光電荷分離状態 / 立体構造 / 電子的相互作用 / 電子スピン共鳴法 |
研究実績の概要 |
本研究では、人工光合成など次世代のクリーンエネルギー創出に向け分子機構の解明が喫緊課題となっている様々な反応系において、反応初期過程の仕組みをオングストローム領域の三次元映像化によって明らかにする画期的な実験的方法論を開発する。高周波時間分解電子スピン共鳴法による計測から複雑な機能を有する分子集合体の初期過程で生成する電荷分離状態の中間体立体構造を、高い空間分解能にて三次元映像として可視化する「時間分解電子スピン分極イメージング法」を開発する。1)光合成タンパク質であるホウレン草のPSIIにおいて生成する初期電荷分離状態の不対電子軌道を特定し、2) 中間体分子の距離および位置と分子配向を高い空間分解能にて画像化する。さらに、3)不対電子軌道間の重なりの大きさ(電子的相互作用)を正確に特徴付ける。以上の高精度計測から、高効率な光エネルギー変換を引き起こす根源的な分子機構の解明に挑戦する。X線回折パターンから得られる三次元構造データのように、電子スピン共鳴スペクトルと一対一で対応する構造情報データを三次元映像として可視化し、構造情報をその精度(空間分解能)と共にわかりやすく説明するツールの提供を目標とする。今回、2)においてQバンド時間分解電子スピン共鳴法によるPSIIの解析を電子スピン分極イメージング法で行った。中間体であるフェオフェチンの分子面内配向が決定され、電子的相互作用との相関を分子軌道レベルで議論することができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在、電子スピン分極イメージング法の開発による光励起中間体立体構造の解析は、PSIIの光電荷分離状態のみに限らず、有機薄膜太陽電池における界面電荷分離状態の立体構造や、シングレットフィッションで生成する多重励起子の励起五重項状態など、様々な系で有用性が確認させている。これにより当研究は予想をはるかに超えるペースで計画以上の進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
PSIIの光電荷分離機構の詳細な解明を進めるために、立体構造、再結合ダイナミクスに対する温度効果を観測し電荷分離に至るわずかな構造変化とその活性化エネルギーを求める計測と解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の装置であるQバンド電子スピン共鳴法によるイメージング構造解析の進展を優先させたため、物品の執行を後回しとした。今後は過渡吸収分光法を用いた外部磁場効果観測に専念するため光学系の物品購入に充てる予定である。
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