研究課題/領域番号 |
17K19108
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
宮坂 力 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授(移行) (00350687)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | X線検出 / 医療診断 / 鉛ペロブスカイト / 光電変換 / 光ダイオード |
研究実績の概要 |
X線の吸収に必要な厚いペロブスカイト結晶層を担持する厚みのあるscaffoldとして、酸化チタンの一次元配列したナノワイヤーを、水熱合成法を使って透明導電ガラス基板(FTO)に厚み10um以上に製膜した。このscaffold上にX線吸収ペロブスカイト材料として三次元(3D)型のメチルアンモニウム鉛ヨウ化物と二次元(2D) 型のブチルアンモニウム鉛ヨウ化物の2種をそれぞれ溶液法によって充填し、spiroOMeTADを正孔輸送層、金を対極として製膜して光電変換素子を作製した。これらのペロブスカイト厚膜を用いる光電応答を可視光によって評価した。2D ペロブスカイトではナノワイヤーの厚み方向の配向の寄与による光電応答が得られ、2Dペロブスカイトの光電応答を高効率化する効果として論文発表した。が、2Dは3Dペロブスカイトよりも応答電流の絶対値は小さく、厚膜による応答は3D材料を用いても十分得られることがわかったため、3D ペロブスカイトを使ってさらに厚みの大きい吸収層を作製する目的で、ペロブスカイトの微結晶粉末を、加熱プレス機を使って高温下で結晶を溶融させながらペレット状に製膜する方法を検討した。加熱プレス機は設備が学内になかったため、メーカーに依頼して加熱プレスを使って実験した結果、圧力2000㎏/㎝2の条件で、結晶の半溶融したペレット(厚さ数100nm)が得られることがわかった。そこでこのペレットに金属電極を蒸着した素子を作製した結果、電圧バイアス下でX線照射による強い電流応答を観測することに成功した。応答感度は、実用化しているCdTeを用いたX 線素子と同程度まで改善された。このようにペロブスカイトを用いるX線検出素子のプロトタイプを作製することができたが、現在はCdTe系に比べてS/N比が低いために、これを高めることを次の課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線の吸収に必要なペロブスカイトの厚い結晶層は、高温加熱プレス機を使った結晶溶融法によって作製できることがわかり、この方法で製膜したペロブスカイトの結晶を使ったX線光電応答素子から、既存のCdTe使用のX線直接検出素子の応答レベルに近い電流応答が取り出せることを検証し、X線検出素子のプロトタイプを作ることに成功した。当初の目的はほぼ達成できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度にプロトタイプを作製する方法として用いたペロブスカイト結晶製膜のための加熱式高圧プレス機の仕様を決めて、これを実験装置として購入する。また、プレス機に用いるペロブスカイトの微結晶(粒子サイズ1um程度)の高純度の粉末を溶液結晶法によって作製する。ペロブスカイトの組成中のハロゲンをヨウ素と臭素、それらの混合物に変えて波長応答感度の異なるペロブスカイト結晶を製膜し、硬X線に対する光電流応答を計測し、かつ結晶膜の厚みを変えながら応答電流出力が最大となる最適条件を決定する。 実用化に向けたペロブスカイトX線検出素子を二次元アレイとするX線イメージングプレートの製作の可能性を示すためアレイ素子の設計を試みる。電極基板には正極の金属電極を、二次元アレイのパターンとして被覆することで、医療診断用センサとして二次元画像情報の取り出しが可能なことを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究成果を受けて、次年度への研究展開のために購入が必要な実験装置(加熱プレス機)が明らかになり、その装置を購入する費用を確保するために、研究費の一部を次年度へ繰越した。したがって、繰り越した次年度使用額は、該実験装置の購入に充当する。
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