本研究は、光生成キャリアを水平方向に取り出すことのできる交互水平接合によって、これまで有機太陽電池に必須とされてきたドナー性とアクセプター性の有機半導体分子のブレンド接合(超バルクヘテロ接合)を必要としない有機太陽電池を実現することを目標とする。今年度、超高速ホール移動度有機半導体 (C8-BTBT)と、超高速電子移動度有機半導体(PTCDI-C8)を組み合わせた水平接合において、どの程度の水平取り出し距離が可能か検討を行った。その結果、1.8センチメーターという、驚くべき距離でも、水平接合セルが美しい光起電力特性を示し、動作することを確認した。光電流は照射光強度に比例し、cmの長距離でも、自由電子とホールの再結合がほとんど起こっていないことが分かった。また、開放端電圧の光強度依存性から得られたダイオードファクター(n)は、3程度を示し、nが1以上の成分は、トラップを介した再結合を意味する。そのため、光電流減少の主な原因は、トラップ誘起再結合であると推定している。このようなトラップとして働く欠陥を除去する方法を見いだすことで、cmの長さの水平セルの性能をさらに向上できると考えている。今後、透明なC8-BTBTとPTCDI-C8の界面に可視光、近赤外光を吸収する有機半導体をサンドイッチし、可視、近赤外(400-1000 nm)に感度を持たせた水平セルに展開し、5%以上の変換効率を得て、実用可能性を実証する予定である。以上の結果は、水平接合によって、高効率有機太陽電池を作製できることを示している。
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