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2017 年度 実施状況報告書

基底状態メカノクロミズムを示すフルオレニリデンアクリダンの研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K19116
研究機関東京大学

研究代表者

松尾 豊  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (00334243)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワードメカノクロミズム / フルオレニリデン / アクリダン
研究実績の概要

本年度は,フルオレニリデンアクリダン(以下FA)のN上の置換基を変更し,アリール基を導入することに成功した.これまでの合成ルートでは,フルオレニルアクリジンからN上に置換基を入れるプロセスを用いていたが,この方法ではアルキル基の導入にのみ成功しておりアリール基は導入できなかった.今回採用した方法では,事前にN上にアリール基を導入したチオアクリドンを合成し,これとジアゾフルオレノンを反応させた後硫黄を引き抜くという合成経路とし,各種アリール基(フェニル,4-ビフェニル,4-ニトロフェニル,4-ブロモフェニル,4-フルオロフェニル,4-アニシル)をN上に持つFAを合成することに成功した.これらの分子は各種スペクトル測定によりキャラクタリゼーションを行った.ビフェニル及びニトロフェニルを持つものについては単結晶X線結晶構造解析にも成功し,特にニトロフェニル体については,多形が存在することがわかった.この結晶多形は分子の配座異性体の違いであり,FA特有の折れ曲がり型およびねじれ型のそれぞれの構造を確認した.このことは,overcrowded alkenes(混み合いすぎたアルケン)であるBis(tricyclic) Aromatic Enes(二重結合の両側に三環芳香族基がある化合物)において,一つの化合物から曲がり型とねじれ型の両方の構造のX線構造解析に成功した,初めての例である.
以前合成したN上メチル基のFAについては,銀塩を用いた酸化により一電子酸化された陽イオン塩が得られた.中性のものとちがい濃い緑色を呈し,おそらくねじれ型の配座をとっているものと考えられる.現在,これの結晶についてX線構造解析を試みているところである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通り,N上に新しくアリール基を導入した新規のFA分子を合成することができた.キャラクタリゼーションも滞り無く進められた.特に,これまでほとんど例がなかったねじれ型配座異性体の単結晶X線構造解析に成功したことが大きい.しかも,同じ化合物で折れ曲がり型の配座異性体のX線構造解析にも成功したので,結合長の議論から,ねじれ型と折れ曲がり型のそれぞれの配座異性体の電子物性の違いの理由を深く理解することができた.酸化体の合成も計画通りであり,順調な進捗と言える.

今後の研究の推進方策

予定通りに新規のFA誘導体を合成できたので,これを用いた素子作製やメカのクロミズムの確認が今後の課題である.現在,N上に新しくアリール基を導入した新規のFA分子についても,機械的な刺激により,折れ曲がり型の配座異性体からねじれ型の配座異性体に変化することを明らかにしている.このとき,オレンジ色から濃い紫色へと変化する.溶媒蒸気に暴露することにより,濃い紫色のねじれ型配座異性体からオレンジ色の折れ曲がり型配座異性体に戻せることを確認しているが,熱で戻せるようにすることが課題である.また,配座異性体変化の前後の電気的特性を評価する.酸化体の特性評価やそれを中性分子に混ぜた場合の効果などの評価も行っていく.最終的にデータや考察をまとめ,研究を総括する.

次年度使用額が生じた理由

当該年度(2017年度)は概ね予定通りの予算執行であったが,当初の予定よりも有機合成プロセスを順調にすすめることが出来たため余計な合成検討を行う必要がなく,試薬等の購入に要する費用が抑えられた.次年度(2018年度)は,2017年度に合成できた各種新規分子についてキャラクタリゼーションや特性評価,素子作製等の検討を行うため,計画よりは予算を必要とすることになる.また,よりいっそう積極的に対外発表を行う予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] USTC/Northeast Normal University(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      USTC/Northeast Normal University
  • [雑誌論文] A Fluorenylidene-Acridane That Becomes Dark in Color upon Grinding _ Ground State Mechanochromism by Conformational Change2018

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Suzuki, Hiroshi Okada, Takafumi Nakagawa, Kazuki Komatsu, Chikako Fujimoto, Hiroyuki Kagi, Yutaka Matsuo
    • 雑誌名

      Chem. Sci.

      巻: 9 ページ: 475_482

    • DOI

      10.1039/c7sc03567e

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Helically-Twisted Ladder Based on 9,90-Bifluorenylidene: Synthesis, Characterization, and Charge Transport Properties2018

    • 著者名/発表者名
      Jinjia Xu, Atsuro Takai, Alisa Bannaron, Takafumi Nakagawa, Yutaka Matsuo, Manabu Sugimoto, Yoshitaka Matsushita, Masayuki Takeuchi
    • 雑誌名

      Mater. Chem. Front.

      巻: 2 ページ: 780-784

    • DOI

      10.1039/c7qm00583k

    • 査読あり
  • [学会発表] Fluorenylidene-acridane, A Molecule That Becomes Dark Color When Its Crystals Are Ground2018

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Matsuo, Tsuyoshi Suzuki, Ya Wang, Hiroshi Okada, Takafumi Nakagawa
    • 学会等名
      17th International Symposium on Novel Aromatic Compounds (ISNA 2017)
    • 国際学会
  • [備考] Matsuo Group at USTC and Tokyo

    • URL

      http://www.matsuo-lab.net

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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