研究課題/領域番号 |
17K19123
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡邊 源規 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60700276)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | シクラセン / π電子系化合物 / カーボンナノチューブ / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブはグラフェンの切り口によりアームチェア型、キラル型、そしてジグザグ型に分別される。ナノーカーボン材料の部分構造の合成は2010年代から盛んに研究されており、これまでに前者二つの基本骨格は合成が達成されている。一方、ジグザグカーボンナノチューブの基本骨格としてシクラセンが知られ、その合成挑戦は他化合物より古く、基礎物性の解明を目的として1980年代から多くの研究者が挑戦しているが未だ合成が達成されていない。これまでにカルボニル前駆体法といわれる我々が開発してきた手法を用い、光や熱を駆動力として>99%の収率で対応する芳香族化合物を合成可能であることを見出しており、これら合成した化合物群は本目的化合物シクラセンの部分構造に当たる。本年度は本手法を用いた未だ未達成であるシクラセンの合成の検討を行った。 まず、出発原料の理論計算から開始した。出発原料は80度程度ピラミッド型に折れ曲がっていることがわかった。これに対応するブロモ体を用いたリチオ化反応から誘導されるカップリング反応を用いれば、目的となる前駆体合成が可能である。環化反応の後、既に確立しているノルボルナジエン部位をカルボニル基に有する構造へ変換する手法で、目的とする前駆体を得る。本年度は、これまでに開発したカルボニル前駆体法により、鍵反応となるブロモ体の合成法を見出し、また本手法を用いて新規の半導体材料を開発した。ブロモヘキサセンは、ブロモ基を有しない母体化合物より、フィルム状態で0.83cm2V-1s-1の正孔移動度を有し、これは母体化合物より10倍程度移動度が早いことが明らかとなった。 シクラセン合成のもう一方の鍵化合物であるノルボルナジエン誘導体の合成法を種々検討したところ、一酸化炭素を原料とした直接エステル化反応により目的鍵化合物が合成可能であることが、モデル実験より示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は二種類の鍵化合物の開発を目的としたが、片方のブロモ体の合成法の開発段階で、目的化合部物の合成法の達成とともに予想に反し新規の安定な有機半導体材料の開発が可能であったため、並行して研究を遂行した。このため、もう片方の鍵化合物であるノルボルナジエン誘導体の開発が、一酸化炭素を原料とした直接エステル化反応により目的鍵化合物が合成可能であることが、モデル実験より示唆されたものの、開発達成には至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
鍵化合物であるノルボルナジエン誘導体の開発が、一酸化炭素を原料とした直接エステル化反応により目的鍵化合物が合成可能であることが、モデル実験より示唆されている。本手法を用いてノルボルナジエン誘導体を開発する。また、開発後、得られているブロモ体とのカップリング反応によりシクラセン誘導体の前駆体となる環状化合物の開発を行う。
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