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アルカンを有機合成反応に直截利用することは現代の化学をもってしても課題が多く．従来の反応の設計思想に依らない，斬新な合成反応手法が求められる．申請者は，上記の問題を打開するため，アルカンを触媒的に脱水素化してアルケンへ変換したのち，入手容易な有機ケイ素反応剤と位置選択的に反応させる技術の開発に取り組んだ．
本年度は前年度に引き続き，まず有機ケイ素化合物の末端アルケンおよび内部アルケンとの反応によるアルケニル化の研究を推進した．使用する触媒は，これまでの研究成果をもとに，電子豊富なホスフィン配位子を有するパラジウム錯体触媒を，安定ケイ素化合物を効率よく活性化するための銅とカルボン酸を組み合わせて実施した．その結果，末端アルケン，すなわち一置換アルケンだけでなく，二置換および三置換アルケンをも付加反応に適用することに成功した．いずれも，アルケン部がほとんど異性化することなく，付加反応に参加していた．異性化と同時に付加させるという本来の目的とは若干異なるが，言い換えると異性化を専門とする触媒と併用することにより，自在に炭素官能基を導入できることを意味している．得られる生成物はいずれもオレフィンであるが，これを単離することなく水素化反応に適用することにより，目的のアルカンを得ることができた．
上記の成果をもとに，当初からの目標である，アルカンの脱水素オレフィン化と組み合わせた，形式的なアルカンによる炭素骨格導入法を研究した．その結果，期待どおり系中で発生するアルケンへの付加反応に成功した．この後，上述の反応成果と組み合わせることにより，研究目的であるアルキル化反応を達成できた．
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