本研究では、アロステリック会合を利用した自己複製触媒の開発を目的とし研究を行っている。2019年度には以下の3つの研究に取り組んできた。 1. 新たに軸スペーサー部が異なる軸不斉誘起型ウレアレセプターを構築し、先のレセプターと併せてキラル誘起能の調査をすべく、種々のアミノ酸塩との会合を行い、円二色性スペクトルにおける軸不斉誘起能の違いを検証した。これによりアロステリック伝達に有効な構造的要素(軸部、ゲスト構造)を調査した。今後、これらの知見をもとに引き続き不斉転写、自己複製反応が可能な系を探索していく予定である。 2. 新規アロステリックレセプターとして、より強固な水素結合形成が期待されるアミジン置換ヒドリンダセンアロステリックレセプターを2種合成した。これらのうちより嵩の小さいイミダゾール基がより大きなアロステリック増幅能を示すことを見出した。今後、先の超分子ポリマー化の知見と合わせ、この構造を元にした超分子ポリマー形成を検討していく。 3. 研究1に関連し、前年度に見出した3枚のターフェニル部位を有するプロペラ型レセプターが形成するキラル集合体に関し詳細を調査した。会合部となるアミド基部分が異なる種々の誘導体の調査から、自己会合の会合定数が10^5 M-1となるものや、キラル反転速度がNMRタイムスケールより遅い誘導体などが見出された。また、コア部のπ平面を拡張したプロペラ分子も構築したところ、類似の会合様式によりキラルな二量体を形成することが分かった。今後、これらプロペラ分子自己会合体を用いたアロステリック会合能および有機触媒特性を調査していく予定である。
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