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2017 年度 実施状況報告書

赤色蛍光RNA結合インジケーターの創成とハイスループット薬剤スクリーニング

研究課題

研究課題/領域番号 17K19133
研究機関東北大学

研究代表者

西澤 精一  東北大学, 理学研究科, 教授 (40281969)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワードノンコーディングRNA / 蛍光インジケーター / 検出
研究実績の概要

本研究では、阻害剤開発を強力に支援しうるFID(Fluorescence indicator displacement assay)法の次世代蛍光インジケーターとして、rRNAのA-site に対して特異的に結合し、かつ赤色蛍光を示すRNA結合リガンドを開発することを試みる。さらに、現在、阻害剤開発の重要なターゲットとなっている、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTAR RNA(Trans-activation responsive region RNA)及びHCV (C型肝炎ウイルス) RNAのIRES(Internal ribosome entry site)等を研究対象として、これらのノンコーディングRNAに特異的に結合する赤色蛍光インジケーターの開発も試み、方法論(RNA結合リガンドの開発概念・活用法)としての汎用性と有用性を実証することを目指す。
平成29年度は、赤色蛍光を示すシアニン色素誘導体に着目し、A-site(バルジ部位)に対する結合能と蛍光応答を評価することで、A-site結合に適した基本骨格のスクリーニングを進めた。その結果、2種のヘテロ環がトリメチンリンカーで連結された構造をもつシアニン色素がA-siteに極めて強く結合すること(解離定 410 nM)、また、light-up型の明瞭な赤色蛍光応答(極大波長 669 nm)を示すことを見出した。この赤色蛍光色素の結合特性は優れたもので、A-siteに対して高選択的に結合し、その結合力は既存の非アミノグリコシド系のA-site結合分子の中でも最高レベルである。こうした知見は今までに報告がなく、A-siteを標的とする赤色蛍光色素の開発を進める上で、極めて重要な知見になると期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「研究実績の概要」で述べたように、現段階において、rRNAのA-site に対して高選択的に結合しうる赤色蛍光色素を見出すことに成功している。また、三重鎖形成ペプチド核酸(PNA)プローブについても開発を進めており、これまでに蛍光色素を疑似塩基として組み込んだPNAプローブを用いることで、従来困難とされてきたRNA二重鎖構造(塩基配列)の迅速かつ高選択的な検出が可能であることを見出している(JACS 2016; Chem. Eur. J. 2017; Org. Biomol. Chem. 2017; Org. Biomol. Chem. 2018)。DNA を骨格とする従来の三重鎖形成核酸プローブと比較して、PNAプローブの優れた特性は、(i)RNA二重鎖結合タンパク質(受容体)に匹敵する結合力を発現すること、また、(ii)極めて迅速(~180秒)かつ塩基配列選択的に三重鎖形成が進行することで、今後、バルジ部位選択的な赤色蛍光色素と連結することにより、rRNAのA-site に対して特異的な結合機能と検出機能を兼ね備えた赤色蛍光インジケーターが実現すると期待できる。
以上のように、本研究は、おおむね順調に進展していると自己評価している。

今後の研究の推進方策

概ね当初の研究計画に従って研究を進める。すなわち、rRNAのA-siteやTAR RNA、IRESは、いずれもバルジ部位を有した二重鎖構造をとっていることに着目し、(1)バルジ部位にある程度選択的に結合できる赤色蛍光色素を開発、さらに(2) バルジ部位に隣接する二重鎖部分に、三重鎖形成を介して塩基配列選択的に結合するペプチド核酸(PNA)を赤色色素に連結することで、バルジ部位に対する特異的な結合選択性を有する赤色蛍光RNA結合リガンドを開発する。これと並行して、構造最適化を進めたRNA結合リガンドをFID法に適用し、蛍光インジケーターとしての機能を評価する。さらに、スクリーニングにより見出した候補化合物に対して、A-site との相互作用ならびにin vitro rRNA 機能阻害能を評価する(TAR RNA及びIRES等に関しても同様)。
以上のように研究を遂行し、本研究で開発する蛍光インジケーターを用いたFID法の有用性を実証することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題を遂行する上で必須な実験装置である超純水製造装置が故障した(平成29年12月)。現在、応急措置により稼働しているものの、新規購入が必要となった。本研究課題の年度予算(250万円)と購入金額(181万円)を考慮した結果、次年度購入が最善であると判断した。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Kinetic and thermodynamic analysis of triplex formation between peptide nucleic acid and double-stranded RNA2018

    • 著者名/発表者名
      Sato Takaya、Sakamoto Naonari、Nishizawa Seiichi
    • 雑誌名

      Org. Biomol. Chem.

      巻: 16 ページ: 1178~1187

    • DOI

      10.1039/C7OB02912H

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] RNA解析・イメージングのための蛍光性核酸プローブの分子設計2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤貴哉, 佐藤雄介, 西澤精一
    • 雑誌名

      ぶんせき

      巻: 2017 ページ: 459-463

  • [学会発表] RNA結合リガンドの設計と合成:塩基欠損部位と三重鎖核酸形成の活用2018

    • 著者名/発表者名
      西澤精一
    • 学会等名
      シンポジウム「核酸の科学」
    • 招待講演
  • [学会発表] RNA選択性を有する赤色蛍光モノメチンシアニン色素の開発2018

    • 著者名/発表者名
      芳野幸奈、佐藤雄介、西澤精一
    • 学会等名
      日本化学会 第98春季年会
  • [学会発表] 蛍光性核酸結合リガンドによるRNA検出と細胞内イメージング2017

    • 著者名/発表者名
      西澤精一
    • 学会等名
      第34回 無機・分析化学コロキウム
  • [学会発表] TAR RNA/Tat相互作用を標的とした阻害剤スクリーニング法の開発:蛍光ラベル化ペプチドを用いた阻害能評価2017

    • 著者名/発表者名
      坂本凌平、佐藤雄介、珍田裕佳、伊藤良子、寺前紀夫、西澤精一
    • 学会等名
      平成29年度日本分析化学会東北支部若手交流会
  • [学会発表] 蛍光性ペプチド核酸プローブによるRNA検出・イメージング2017

    • 著者名/発表者名
      西澤精一
    • 学会等名
      日本分析化学会第66年会
    • 招待講演
  • [学会発表] TAR RNA/Tat相互作用を標的とした阻害剤スクリーニング法の開発:蛍光ラベル化ペプチドを用いた阻害能評価2017

    • 著者名/発表者名
      坂本凌平、佐藤雄介、珍田裕佳、寺前紀夫、西澤精一
    • 学会等名
      日本分析化学会第66年会
  • [学会発表] Design and synthesis of fluorescent molecular probes for RNA sensing2017

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nishizawa
    • 学会等名
      The 17th Beijing Conference and Exhibition on Instrumental Analysis (BCEIA 2017)
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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