研究実績の概要 |
本研究では、阻害剤開発を強力に支援しうるFID(Fluorescence indicator displacement assay)法の次世代蛍光インジケーターとして、rRNAのA-site に対して特異的に結合し、かつ赤色蛍光を示すRNA結合リガンドを開発することを試みる。本研究では特に、赤色蛍光を示すシアニン色素誘導体に着目し、A-siteに対する結合能と蛍光応答とを評価することで、A-site結合に適した基本骨格のスクリーニングを進めた。その結果、シアニン色素TO-PRO-3が、rRNA A-siteに対する深赤色蛍光インジケーターとして機能することを見出した(Chem. Commun., 2019)。TO-PRO-3は、A-siteのインターナルループに高選択性を示し(Kd = 1.1 μM)、結合に伴って明瞭なoff-on型のlight-up応答を示す。TO-PRO-1を含む一連のシアニン色素との比較から、TO-PRO-3のトリメチン構造がインターナルループ構造への結合選択性発現に重要であることが示唆された。TO-PRO-3は、深赤色蛍光応答(Ex 632.5 nm / Em 663 nm)を示す初めてのFIDインジケーターであり、青色~緑色蛍光性化合物のスクリーニングへも適用できるため、極めて有用なインジケーターとして期待できる。 また、rRNA A-siteに対する蛍光インジケーターとして、ナフチリジン誘導体ATMND-C2-NH2を報告した(Chem. Eur. J., 2018)。ATMND-C2-NH2は青色蛍光であるため、FIDアッセイでの利用には制限があるものの、その結合特性は優れたもので、A-siteのループ部位に高選択的に結合し、結合力(Kd = 440 nM)は既存の非アミノグリコシド系のA-site結合分子の中で世界最強である。
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