研究課題/領域番号 |
17K19139
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
上村 明男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30194971)
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研究分担者 |
藤井 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (20432883)
川本 拓治 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70756139)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | イオン液体 / 抽出分離 / 脂溶性 / 水溶性 / 保護基 |
研究実績の概要 |
各種スイッチングイオン液体の合成開発と、その物性的な興味の展開:これまでに合成したスイッチングイオン液体[PGA][TFSA]および[GA][TFSA]の物性について検討を行った。[PGA][TFSA]および[GA][TFSA]に対して精密密度測定を行い、分子間相互作用体積(VInter値)を算出したところ、幅広い温度領域で[PGA][TFSA] > [GA][TFSA]であった。また、イオン伝導度および粘度データに基づいてイオンの解離度(ionicity)の指標となるWalden plotを作成した。これらの基礎物性評価により、新規スイッチングILは、(1) 従来型ILと比較してイオン間相互作用が弱いこと、(2) [PGA][TFSA]から保護基を外して[GA][TFSA]に変換するとイオン間相互作用が強くなる(凝集力が大きくなる)ことがわかった。放射光X線散乱実験およびMDシミュレーションを遂行し、スイッチングILの構造特性を分子レベルで調べたところ、最近接のカチオン-アニオン相互作用は両IL系でほぼ類似していたのに対し、第二近接以降の長距離相互作用に大きな違いが見られた。これは、イオン液体に特有な液体状態での構造秩序性がGA系で顕著であることを示唆しており、上記のマクロ物性の結果と良く一致した。 水溶性のイオン液体[GA][TFSA]が酢酸エチルによって抽出されることから、より水溶性を高くするためにグリセルアルデヒド由来のジオールユニットを2つ有する新たなイオン液体を設計し合成した。合成はグリセルアルデヒドにプロピルアミンを2当量作用させた還元的アミノ化反応で合成できることがわかった。このものの酸加水分解はこれまでと同様の薄い酸性条件で進行することがわかった。このテトラオール型イオン液体の物性検討を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果にも示したように、新しいスイッチングイオン液体の物性について明らかにし、その脂溶性/水溶性の原因についても物性調査の結果がわかってきた。また水溶性をさらに改善するためにテトラオールイオン液体の開発も成功した。今後はこれらのイオン液体を駆使して当初期待していたランタノイドイオンを使った無機錯体の合成実験を進め、その有用性を示す研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
単純な保護基の化学をイオン液体の科学に展開し、水素結合性のイオン液体に与える効果を明らかにできた。これらの知見はイオン液体の溶解性のコントロールに有用な知見を与えることが期待でき、スイッチングイオン液体の新コンセプトはイオン液体科学に大きな発展をもたらすことが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した試薬を使った合成がやや遅れたために、残額が発生した。次年度にこの合成を行う予定である。
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