研究課題/領域番号 |
17K19140
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 電子移動 |
研究実績の概要 |
メモリー、センサー、波長変換材料などへの応用を目指して、極性構造を有する物質の開発が盛んに行われている。特に、分極をスイッチできる物質は強誘電メモリー材料(記録材料)として広く利用されている。一般に強誘電物質中の分極スイッチングはイオンの変位により実現されている。一方、本研究では従来のメカニズムと異なり、分子内の電子移動により分極がスイッチする新物質を開発することを目指した。電子移動による分極スイッチングを達成するために、シアノ錯体に着目して研究した。特にキラルビピリジン誘導体および[Tp*Fe(CN)3] (Tp* = tri(3,5-dimethyl-pyrazol-1-yl)borate)を合成し、それらを用いてキラルな多核錯体を合成すること、及びそれらを結晶中で同じ方向に配向させることを試みた。実際に鉄鉄四核錯体、鉄コバルト四核錯体を開発することができた。単結晶X線構造解析により、鉄鉄四核錯体では鉄(III)低スピンと鉄(II)高スピンがシアノ基を介して交互に配列していることが分かった。また、磁気特性の測定、及び赤外吸収測定により窒素側に配位した鉄(II)イオンがスピンクロスオーバー挙動を示すことが分かった。電子移動、及び電子移動結合スピン転移挙動は観測されなかった。さらにSS体のみを用いて鉄鉄四核錯体を合成しその磁気特性を測定したところ、スピン転移が約50%のみ進行し残りは低温でも高スピンのままであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルビピリジン誘導体の合成と、キラル配位子を利用した金属錯体を合成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
三核錯体の電子移動方向を制御することにより、結晶レベルで極性-非極性変換を示す新物質を開発することを目指す。極性-非極性変換を示す新材料を開発するために、三核ヘテロ金属錯体の合成、及び、三核ヘテロ金属錯体の配列制御を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
キラル配位子を利用した多核錯体の合成に際し、金属置換が観測されたため合成法を再検討する必要が生じた。次年度使用額を用いて3か月を目途に再検討を終了すると共に、翌年度分の助成金を用いた研究を計画通り遂行する。
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