研究課題/領域番号 |
17K19143
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高見澤 聡 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (90336587)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 超弾性 |
研究実績の概要 |
本研究では、合金等の無機材料以外では知られていなかった“超弾性”という物性を有する“金属錯体”を探査・合成する。また、超弾性変態における可逆的結晶構造変化を利用して、金属錯体の固体物性を制御する手法の開発を目指す。 “超弾性”とは、塑性変形した固体が自発的に形状回復する特性であり、金属材料学が扱う合金等の特性とされてきた。応募者は2014年に世界で初めて、単純な有機物分子の単結晶において超弾性現象を発見し、その後、金属錯体においても超弾性現象が現れることを見いだした。本研究では、超弾性を示す金属錯体(“超弾性金属錯体”)の更なる探査および合成を行う。これにより、錯体の様々な固体物性と超弾性を組み合わせた新研究が可能となり、また、柔軟に変形可能な新規の錯体結晶の創出にも繋がると考えられる。 平成29年度は超弾性を示す金属錯体の探査を行った。合成研究を推進するにあたり、以下の三段階の手順を設定し、合成による超弾性探査ならびに構造解析に基づく超弾性機構の理解を目指した。 (1) 合成方法・結晶構造が既知の金属錯体について超弾性挙動の有無を調べた。(2) 超弾性発現に必要な分子構造を、配位子の結晶体も含めて結晶変形・結晶構造変化等の観測結果から絞り込む実験研究を進めた。(3) (2)に基づいて超弾性を示すと期待される金属錯体を新規に設計・合成研究を進めた。特に、これまでの超弾性特性から逸脱する新しい特性の観測に留意して実験研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超弾性を発現する金属錯体結晶の探索では良好な結果を出すには至らなかったが、金属錯体の部分構造となる配位子に相当する有機化合物の結晶体において、これまでの有機超弾性に加え、相関性が高いと考えられる有機強弾性現象の確認に成功した。これにより、本研究で対象とする金属錯体での変形挙動について対象の拡張と現象を総合的に理解しうる下地が形成されたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成30 年度は、29 年度からの合成実験を継続しつつ、超弾性と各種固体物性(電気・磁気・光等)とがカップルする物質を見つけた場合に、新規機能創出に取り組む。 超弾性を示す金属錯体について、応力誘起相転移の前後の平衡状態で、電気、磁気、光等の物性値がどう変わるかを調べる。超弾性変態の前後で、磁化率や分極率などが大きく変化する場合には、外部からの磁場や電場印加の影響が、超弾性の変態応力または逆変態応力に影響する可能性がある。この場合、外場のON/OFF によって、一定応力負荷下における結晶変態の促進または阻害が起こり、応力負荷と外場印加を組み合わせた新しい結晶変態および物性値制御が可能となるものと期待できる。
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