本研究では、デザイナブル・ハイブリッドデジタル電気泳動の創成を目的として、機能性ヒドロゲル充填凹凸型キャピラリーデバイスを用いた分析法の開発を行った。ポリアクリルアミドゲルを基本骨格とし、分子ふるい能、pH緩衝能様、アフィニティ捕捉能、抗原捕捉能など様々な機能が付与されたハイドロゲル(機能性ハイドロゲル)が部分的に充填されたキャピラリーを調製した。これを内管とし、内管外径と同程度の内径を有するキャピラリーを外管として組み合わせることで、機能性ヒドロゲル充填凹凸型カートリッジを作製した。作製したカートリッジは、それぞれ凹凸部をスムーズに組み合わせられるため、異種カートリッジ接続時の煩雑な軸調整・デバイス調整の必要性が解消された。また、接続溶液として希薄なヒドロゲルプレポリマー溶液を用いて接合することで、実験中にデバイスが崩壊することなく、実験後には分解することが可能となった。その結果、多様な性質のタンパク質を含む混合試料に対して、等電点や分子量、免疫反応などに基づく分離・分取を一次元デバイスで電気泳動するだけの単純な操作で実現することに成功した。さらに、各種機能性ゲルに捕捉分離された試料を回収した後、それぞれの試料に対する二次元分離・分取も可能となった。これらの結果から、これまで複数の機器を用いて異なる原理で行っていた複雑な前処理を単純な電気泳動のみで実現できる可能性を見出した。今後、血清等の複雑系試料から、対象となる標的分子群のみを分離・分取するハイブリッド前処理法への応用による、生体試料分析の高効率化に貢献できるものと見込まれる。
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