研究課題/領域番号 |
17K19146
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野々山 貴行 北海道大学, 先端生命科学研究院, 特任助教 (50709251)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 相分離 / ゲル / 熱応答性材料 |
研究実績の概要 |
当研究室で偶然発見された「温度に応答して力学物性が可逆的かつ劇的に変化する体積変化を示さない(アイソコリック性)ハイドロゲル」について、前年度までに種々の組成からなるゲルを作製し、相分離温度や力学物性転移比のチューニングを行った。さらに、ポリマーと塩が相互作用することで相分離現象を発現している点に着目し、塩の疎水性度を変えることで相分離挙動を制御できることを見出した。これらの新奇性を鑑みて、国内特許出願及びJST権利化支援を受けてPCT出願を行った。本年度では、水中や生理環境下でも使用できるような塩を用いないアイソコリックゲル、及び架橋剤を用いない物理架橋型のゲルの創成を行った。前者について、これまでに多くの報告がある相分離を示すポリマーであるポリ(イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)と、PNIPAmと水素結合を形成するポリメタクリル酸から成る共重合ゲルを作製した。本ゲルは水素結合の形成により水中で収縮し、比較的高い高分子体積分率を維持できる。また、PNIPAmの性質により熱で相分離し弾性率が上昇することが示された。後者について、高いモノマー濃度で重合したポリアクリル酸ゲルを高濃度の酢酸カルシウム水溶液に浸漬することで、完全物理架橋型のゲルの作製に成功した。ナイフで本材料を切断し、切断面を合わせて静置すれば、再度接着することが示された。また、本材料は物理結合ゲルのため、硬いハードマテリアルとの複合材料用マトリックスとしても使用できる。ガラス繊維布との複合材料は、低温では柔らかく、高温では硬くなる温度応答性プロテクターとして利用できる。本材料は、アスファルトに対する摩擦熱で瞬時に硬くなり、ほとんど構造が壊れないことが示された。これらの成果をまとめ、現在論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な原理の理解だけでなく、その理解に基づいて発展的な材料の創製も進んでいる。また、極めて実用的なアプリケーションの検討も並行して行っており、いくつかの企業と実用の検討を行っている。最終年度に向けた総まとめの論文を投稿中であり、総じて、おおむね順調な進捗状況にあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本ゲルの強い相分離現象の原理を応用して、無溶媒のゴム・エラストマーへの発展を試みる。ハイドロゲルは水溶媒があるため、利用が制限される。産業的には、構造がゲルとほとんど同じだが乾燥を気にしないゴム・エラストマーの方が、利用価値が高い。エラストマーを高温で強く相分離させる機構を導入する。また、本相分離は強い吸熱反応を伴うため、それを利用した熱吸収材の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本財源で出張予定であった複数の旅費が別財源に回された。 物品購入、旅費及び英文校正料に当てる。
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