研究課題/領域番号 |
17K19153
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
青木 俊樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80212372)
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研究分担者 |
金子 隆司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90272856)
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 円偏光 / キラル増減 / らせん選択重合 / 絶対不斉高分子合成 |
研究実績の概要 |
<1>高選択的環化芳香族化反応(SCAT)の展開―らせん巻き方向選択性の付与―(円偏光によるホモキラリティーの生成):円偏光照射によるラセミらせんポリマーのらせん巻き方向選択的環化三量化分解(HSSD)の最適条件を二つのヒドロキシメチル基とドデシルオキシ基を有するアキラルフェニルアセチレンのアキラル触媒系を用いた重合により合成したアキラルらせんポリマーで検討し、これまで固体状態でのみ成功していた本反応を初めて溶液状態でも進行することを明らかにした。 また、全く不斉源を含まない重合系においても同様の片巻きらせんポリマーを与える重合(自発性HSSP)において、試行数が大きくなるにつれて右巻き優先ポリマーを与える場合と左巻きらせんポリマーを与える場合の累積回数の比が1に近づくことを明らかにした。キラルアミン存在下固化させたアキラルモノマーから完全にキラルアミンを留去した後の粉末のCD測定でコットン効果が見られること、およびそのモノマーをアキラル触媒により重合することでモノマー状態のコットンシグナルの符号に対応するコットン効果を示すらせんポリマーが得られることを明らかにし、自発性HSSPの原因がキラルな会合体である有力な根拠を明らかにすることに成功した。 <2>らせん選択重合ポリマーの不斉触媒への利用(キラル転写):イミノ基およびアミノアルコール残基など配位部位をもつフェニルアセチレンモノマーのらせん選択重合により合成した片巻きらせんポリマーをキラル共触媒(不斉源)とし、このキラル共触媒とは異なる構造のモノマーのらせん選択重合を検討し、らせん選択重合により得られた片巻きらせんポリマーの不斉(共)触媒性を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として計画していた<1>高選択的環化芳香族化反応(SCAT)の展開―らせん巻き方向選択性の付与―(らせん巻き方向選択的環化三量化分解(HSSD)および溶液反応への展開、および<2>らせん選択重合ポリマーの不斉触媒への利用(キラル転写)、に関して、今年度、それぞれ一通り検討を進めることができた。また、自発性HSSPの原因としてキラルな会合体を仮定し、その有力な根拠となる実験結果を得ることができた。キラル転写重合については、より一般性を高めるための補足実験を残しているが、おおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に実施した<1>高選択的環化芳香族化反応(SCAT)の展開―らせん巻き方向選択性の付与―(らせん巻き方向選択的環化三量化分解(HSSD)および溶液反応への展開、および<2>らせん選択重合ポリマーの不斉触媒への利用(キラル転写)、を組み合わせることで、<3>らせん選択重合の非線形性の制御(キラル増幅の実現)の検討を予定している。準備状況としては、これまでに40種以上のHSSPに適するモノマーを合成に成功しており、0.3%という極少量のキラル共触媒量でのHSSPにも実現にも成功している。また、今年度の成果より、自発性HSSPでは、偶然にごくわずかに生じた鏡像対称性の破れがHSSPの機構により増幅された可能性が高いと考えられるので、これらを利用し、円偏光を不斉源とするラセミ高分子のらせん巻き方向選択的環化芳香族化分解(HSSD)により、光学活性な片巻きらせん高分子を合成(ホモキラリティーの生成)し、続いてこの生成したキラリティーを不斉源とした触媒的不斉増幅重合反応(キラルの転写・増幅)により、不斉触媒とは異なるキラル高分子を合成する。この反応を連続的な反応として実現することを目指す。転写・増幅過程の重合での生成ポリマーのらせん巻き方向について、①アキラル条件(不斉源の重合開始剤に対するモル比、重合系の撹拌方向など)および②キラル共触媒の光学純度、③条件①、②の組合せでの制御を検討する。 また、自己不斉増幅重合、不斉転写増幅重合の検討として、HSSPにより得られた光学純度の低いらせん高分子をキラル共触媒(不斉源)として用い、自己不斉増幅HSSP(低い光学純度の高分子触媒を用いて触媒自身よりも高い光学純度の触媒と同じ高分子を得る)および不斉転写増幅HSSP(低い光学純度の高分子触媒を用いて触媒自身よりも高い光学純度の触媒とは異なる高分子を得る(キラル転写))を検討し、条件を最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は基本となるモノマーを用いたらせん選択重合、らせん選択重合ポリマーの不斉触媒への利用、らせん巻き方向選択的環化芳香族化分解およびその溶液反応への展開、および自発性HSSPの機構についての検討を進めた。次年度はより一般性を高めるために、モノマー構造を種々変更し、それらの重合の最適化を検討する。円偏光によるらせん巻き方向選択的環化芳香族化分解反応における照射波長についても検討する予定である。よって次年度はより合成、反応に掛かる消耗品費および波長カットフィルターなど光源関連の消耗品費がより多く必要となると思われるため。 (使用計画) 合成用試薬および合成用器具類ならびに波長カットフィルターなど光源関連の消耗品費として用いる。また、一部を調査研究費へ充てる予定である。
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