研究実績の概要 |
4位に種々の光学活性アルコール(2-ブタノール、メントール、2-フェニルエチルアルコール)のラセミ混合物由来の置換基を有する3,5-ヒドロキシメチルフェニルアセチレン誘導体(R/S-フェニルアセチレン)を合成し、アキラル条件下ロジウム触媒により重合した。生成ポリマーは分子量20~80万程度の高重合体でソルベントキャスト法により容易に自立膜を作成可能であった。また、生成ポリマーは側鎖間のヒドロキシメチル基間の水素結合により安定化したシス―シソイダル構造由来のタイトならせん構造を持つこと、また、円二色性スペクトル(CD)測定および比旋光度測定に対して不活性であることから、主鎖中に右巻きおよび左巻きが等量存在するラセミらせん構造であることがわかった。 得られたラセミらせんポリ(R/S-フェニルアセチレン)に対して、左巻き円偏光(L-CPL)を照射することで、高選択的環化芳香族化分解(SCAT)が進行することが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の経時測定より明らかになった。また、CD測定よりSCATが進行するにつれて、コットンシグナルが現れたことから、らせん巻き方向選択的にSCATが進行(CPL-SCAT)したことがわかった。 CPL-SCATにより生成した1,3,5-置換ベンゼンを分取し、加水分解することでアルコールを再生し、比旋光度測定により光学純度を決定した。12時間、24時間、72時間L-CPLを照射した場合では、再生した2-ブタノールの光学純度はそれぞれ44.3、55.2、56.3%となった。以上より、SCAT反応がらせん巻き方向選択的に進行していることが確認され、またCPLによるらせん巻き方向選択的分解反応を利用することで、アルコール類の光学分割が可能であることを明らかにした。この方法は広範なアルコールに対して応用可能と考えられ、また、今後アミン類に対しても有用性を検討することで光による光学分割法として有用方法になると期待できる。
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