本研究は、キラルネマチック液晶が有する選択反射と選択透過の性質を利用して、発光性二置換ポリアセチレン誘導体の無偏光蛍光を光学的にキラル分割して、左右の円偏光発光を得て、さらに、温度変化により円偏光発光のキラルスイッチングを実現することを目的とする。二年目にあたる本年度は、タンデム型三層キラル液晶セルを新たに構築し、アキラル白色発光性の共役コポリマーと組み合わせることで、赤緑青(RGB)三原色の円偏光発光を取り出し、そのキラリティーをも制御できるキラルプリズムを構築することを目的とした。研究実績は以下のとおりである (1)白色発光のアキラル(ラセミ体)共役コポリマーを合成した。三層液晶セルの片面に共役コポリマーのキャストフィルムを作成し、このポリマーフィルムを無偏光の白色発光源とした。(2)軸不斉ビナフチルドーパントの添加量を変えることで、ヘリカルピッチの異なる三種類のキラルネマチック液晶を調製した。これをそれぞれ石英セルに注入して三層キラル液晶セルを構築した。キラルネマチック液晶はらせんピッチが異なるため、異なる波長領域で選択反射・透過が可能となることを分光学的に確認した。(3)三層キラル液晶セルと白色発光共役コポリマーを組み合わせることで、RGBの円偏光発光にキラル分割する「キラルプリズム」デバイスを構築した。左右の円偏光がRGBの発光色を示すため、このキラルプリズムを駆使することで、8通りの円偏光発光を発現させることができた。また、発光の非対称性因子は最高で1.94と理想値の2に近い値を得た。本成果により、新規の超高密度の光学メモリーへの応用が期待される。
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