研究課題/領域番号 |
17K19157
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大北 英生 京都大学, 工学研究科, 教授 (50301239)
|
研究分担者 |
玉井 康成 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794268)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | 分子内D-A / 結晶性共役高分子 / 一重項分裂 / 分子鎖内 / 分子鎖間 / 三重項励起子対 / 三重項励起子解離 / 励起子拡散定数 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、以下の研究項目ついて検討した。 【中程度の分子内D-A性を有する結晶性共役高分子を用いた高効率一重項分裂の探索】 これまでの探索研究により、分子内D-A性が高い共役高分子では、一重項分裂ではなくポーラロン生成が観測されたことから、今年度は中程度の分子内D-A性を有する電子吸引性のジケトピロロピロール(DPP)骨格と電子供与性のチオフェン(T)骨格を主鎖に有する狭バンドギャップ結晶性共役高分子PDPP3Tを対象とした。この系について、励起直後の非緩和一重項励起子から三重項励起子が生成する高速素過程を、超短パルス過渡吸収分光法を用いてサブピコ秒の時間分解能にて測定した。その結果、分子鎖内相互作用が支配的なJ凝集性が高い溶液分散系では一重項分裂はまったく観測されず、分子鎖間相互作用が支配的なH凝集性が高い薄膜ほど一重項分裂によって励起直後より効率よく三重項励起子が生成することを見出した。この結果は、少なくともPDPP3Tにおいては、分子鎖内での一重項分裂の生成効率は無視できるほど小さいといえる。一方で、分子鎖間での励起子相互作用の大きな系ほど一重項分裂が効率よく進行することを示しており、一重項分裂には分子鎖間相互作用が重要であることが分かった。また、一重項分裂により生成した三重項励起子対が自由な三重項励起子へと解離する効率は、非晶性のPTB1薄膜に比べると結晶性のPDPP3T薄膜において向上していることを明らかにした。この結果は、三重項励起子対から自由な三重項励起子への解離には励起子拡散定数が大きいことが重要な要因であると推察される。
|