平成30年度は、表面機能化ポリマーナノ粒子と自己組織化ポリマーを合成し、これらのポリマーの自己組織化について検討した。 1)表面機能化ポリマーナノ粒子と自己組織化ポリマーの合成 リビングラジカル重合により、親水性ポリエチレングリコール鎖と機能基、疎水性アルキル基を持つ両親媒性ランダムコポリマーをポリマーナノ粒子の前駆体として合成した。これらの共重合体は、水中でサイズの揃った球状ミセルを形成し、その側鎖構造や組成、鎖長を制御すると、サイズと会合数を自在に制御できることがわかった。この知見を基に、相補的なイオン性基(カチオン、アニオン)を末端にもつユニマーミセルなどの表面機能化ポリマーナノ粒子を設計した。また、有機溶媒中でエステル交換反応を分子内架橋反応に利用し、疎水性ポリマーナノ粒子を合成することに成功した。 2)ポリマーナノ粒子の選択的結合 末端カチオン性ユニマーミセルと末端アニオン性ユニマーミセルポリマーを水中で混合すると、カチオン性部位とアニオン性部位のポリイオンコンプレックス形成を駆動力として、これら二つのミセルが選択的に結合したダブルコアミセルを構築できることを見出した。この結合は、イオンの添加などにより可逆的に切断することも可能であった。さらに、この精密結合法を用いてポリマーナノ粒子のネットワーク化などを検討した。 3)両親媒性ランダムコポリマーのバルク状での自己組織化・ミクロ相分離 結晶性アルキル基と親水性PEG鎖(または柔軟なジメチルシロキサンなど)を側鎖に持つランダム共重合体は、アルキル側鎖の結晶化と側鎖間の偏斥力を駆動力として、固体やフィルム状で精密に自己組織化し、5 nm程度の微細なラメラ状または球状ミクロ相分離構造を形成することが明らかとなった。このドメイン間隔は、側鎖構造と側鎖長に依存して決定されるため、主鎖重合度や分子量分布に依存しない特徴を持つ。
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