研究課題/領域番号 |
17K19161
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
池田 富樹 中央大学, 研究開発機構, 機構教授 (40143656)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 架橋液晶高分子 / アゾベンゼン / 光運動材料 / フォトクロミック分子 / 動的共有結合 / 光配向 |
研究実績の概要 |
フォトクロミック分子を有する架橋液晶高分子は,光照射に応答してマクロな変形を示すため,ソフトアクチュエーターとしての応用が期待されている。しかし架橋高分子は本質的に不溶・不融であるため,一度ネットワーク構造が形成されるとその後の成形加工は困難であった。この課題を克服することができれば,高分子光アクチュエーターの用途に応じた自在設計が可能になる。これまでの研究において,側鎖型架橋液晶高分子の架橋部位に動的共有結合を導入することにより,架橋の組替えによる再成形を可能にした。本研究は,架橋の組替えの原理を用いてメソゲンの任意配向と流動を実現することを目的としている。 まず,これまでに作製した動的共有結合を有する側鎖型架橋液晶高分子について,加熱下において直線偏光を照射することにより光配向を検討した。架橋密度の高い系においては,直線偏光照射によるメソゲン再配向は誘起されなかった。これは架橋部位のメソゲンが初期配向を記憶しており,これを消去するのが困難であるためと考えている。そこで架橋密度を低下させたところ光配向が可能になり,架橋の組替えにより新たな配向が記憶されること分かった。光照射配向処理後のフィルムについて,室温で紫外光を照射するとマクロな変形が起こった。 また,主鎖に動的共有結合を含む架橋液晶高分子を新たに作製した。加熱下において一軸伸長し応力緩和実験を行ったところ,架橋高分子であるにも関わらず応力がほぼ完全に緩和した。これは架橋の組替えにより主鎖の形態緩和が可能になるためであると考えている。側鎖型と比較したところ,主鎖型はより高い成形性を示すことが分かった。一軸伸長時の温度制御によりメソゲンの配向制御も可能であり,配向処理後のフィルムに紫外光を照射すると光源に向かって屈曲した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,光配向手法の開拓と流動可能な光応答性架橋液晶高分子の創出を同時並行で遂行した。従来の側鎖に動的共有結合を含むフィルムについて,架橋密度を制御することにより,光配向の適用が可能になった。また,新たに主鎖に動的共有結合を含む架橋液晶高分子を開発し,高温条件における流動が可能になった。これらの成果は当初計画の目標水準に到達しており,研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては,前年度に得られた知見に基づき,光配向によるパターニングと主鎖型架橋液晶高分子における光配向について検討する。パターニング手法を確立することにより,フィルム内に様々な初期配向を施すことが可能になり,光変形の三次元制御が期待できる。さらに光配向パターニングを主鎖型試料にも適用することにより,高い成形性と配向制御性を併せ持つ架橋液晶高分子の創出が可能になる。初期形状・初期配向を様々に制御することにより光アクチュエーターの高機能・高性能化をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2017年度は側鎖および主鎖に動的共有結合を有する架橋液晶高分子をいろいろ合成したが,これらの化合物と類似した化合物は研究室において従来より合成されてきており,購入済みの試薬やガラス器具が使用可能であったため予定より消耗品費の支出が少なく,次年度(2018年度)使用額が生じた。 (使用計画)2017年度未使用分については,2018年度にモノマーの大量合成に用いる試薬・ガラス器具やソフトアクチュエーターやソフトロボット作製に用いる基板・光学フィルター・LED光源などの消耗品費に充てる。
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