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2017 年度 実施状況報告書

分子複合体を可逆架橋とした形状記憶ゲルの設計と分子応答形状記憶特性

研究課題

研究課題/領域番号 17K19163
研究機関関西大学

研究代表者

宮田 隆志  関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワードゲル / 刺激応答性ゲル / 形状記憶 / 分子集合体 / 可逆架橋 / シクロデキストリン / グルコース応答性
研究実績の概要

本研究では,一時的な形状を維持するための可逆架橋として分子複合体を利用することにより,分子刺激によって一時的形状から元の形状へと変化する分子応答性の形状記憶ゲルの設計を試みる。本年度は以下のような研究成果が得られた。
i)ビスフェノールA(BPA)に応答する形状記憶ゲルの設計:可逆架橋としてシクロデキストリン(CD)とBPAとの分子複合体を利用することにより,BPAに応答して一時形状を維持する形状記憶ゲルの設計を試みた。具体的には,重合性官能基を導入したアクリロイル化CDと親水性モノマーのアクリルアミド(AAm),架橋剤モノマーのN, N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を共重合することにより,BPAに対するリガンドとしてCDを有するP(CD-AAm)ゲルを合成した。この合成時の形状を成形初期の元形状とし,このゲルに応力を負荷させて変形させた状態でBPA水溶液に浸漬させ,一時的な形状を固定することに成功した。この一時形状のP(CD-AAm)ゲルをアセトン水溶液に浸漬し,ゲルからBPAを除去して可逆架橋を解離させると,初期形状へと回復することが確認された。
ii)グルコースに応答する形状記憶ゲルの設計:側鎖グルコース含有モノマー(GEMA)の重合体であるPGEMAを存在させた状態でフェニルボロン酸基含有モノマー(PBA)とAAm,MBAAを共重合することにより,フェニルボロン酸基と側鎖グルコース基をもつPBA-GEMAゲルを合成した。このとき,PBA-GEMA複合体の形成を阻害する過剰のグルコースを存在させた状態でPBA-GEMAゲルを合成した。このゲルを変形させた状態で緩衝液に浸漬してグルコースを除去し,PBA-GEMA複合体形成により一時的な形状を固定することに成功した。この一時形状のPBA-GEMAゲルをグルコース水溶液に浸漬すると,その阻害効果によって可逆架橋を解離させることができ,ゲルが初期形状へと回復することが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ビスフェノールA(BPA)およびグルコースに応答する形状記憶ゲルを合成し,特定条件下で一時形状を維持することが確認できた。またBPAの除去やグルコースの添加により,初期形状へとゲルの形状が回復することを確認し,予定よりも早く分子刺激に応答する形状記憶ゲルの合成に成功した。したがって,当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今後の方針として以下のような研究計画に基づいて研究を遂行する予定である。
i)BPA応答性形状記憶ゲルの構造と形状記憶効果:CD-BPA複合体からなる可逆架橋とMBAAからなる共有結合架橋との比率によって形状記憶効果が左右されると考えられる。そこで,P(CD-AAm)ゲルを合成する際のCD含有率とMBAA含有率を変化させたゲルを合成し,BPA存在下での一時形状の記憶効果を検討する。さらに,可逆架橋と共有結合架橋との比率によって決定される初期形状と一時形状の2種類の安定化構造を明確にし,形状記憶機構を解明すると共に,優れた分子応答性形状記憶ゲルを合成するための設計指針を明らかにする。
ii)グルコース応答性形状記憶ゲルの構造と形状記憶効果:PBA-GEMA複合体からなる可逆架橋とMBAAからなる共有結合架橋との比率によって形状記憶効果が左右されると考えられる。そこで,PBA-GEMAゲルを合成する際のPBA含有率とMBAA含有率を変化させたゲルを合成し,一時形状の記憶効果とグルコースに応答した形状回復率を検討する。さらに,可逆架橋と共有結合架橋との比率によって決定される初期形状と一時形状の2種類の安定化構造を明確にし,形状記憶機構を解明すると共に,優れた分子応答性形状記憶ゲルを合成するための設計指針を明らかにする。
iii)複数形状を記憶する形状記憶ゲルの設計:CD-BPA複合体を可逆架橋とするネットワークとPBA-GEMA複合体を可逆架橋とするネットワークからなる相互侵入網目(IPN)ゲルを合成する。このような2種類の分子複合体を可逆架橋とするゲルの形状記憶挙動を検討する。
iv)形状記憶ゲルのセンサー応用:標的分子濃度と形状記憶率や形状回復率との関係を調べ,分子センサーや分子アクチュエータへの応用を検討する。さらに,分子種を入力情報とし,形状変化を出力情報としたAND/OR型ロジックゲートへの応用も検討する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Design of protein-responsive micro-sized hydrogels for self-regulating microfluidic systems2018

    • 著者名/発表者名
      Hirayama Mayu、Tsuruta Kazuhiro、Kawamura Akifumi、Ohara Masayuki、Shoji Kan、Kawano Ryuji、Miyata Takashi
    • 雑誌名

      J. Micromech. Microeng.

      巻: 28 ページ: 034002~034002

    • DOI

      10.1088/1361-6439/aaa876

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Preparation of molecularly imprinted hydrogel layer SPR sensor chips with lectin-recognition sites via SI-ATRP2018

    • 著者名/発表者名
      Naraprawatphong Rinyarat、Kawamura Akifumi、Miyata Takashi
    • 雑誌名

      Polym. J.

      巻: 50 ページ: 261~269

    • DOI

      10.1038/s41428-017-0013-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Biomolecularly stimuli-responsive tetra-poly(ethylene glycol) that undergoes sol?gel transition in response to a target biomolecule2017

    • 著者名/発表者名
      Norioka Chisa、Okita Kazuma、Mukada Miho、Kawamura Akifumi、Miyata Takashi
    • 雑誌名

      10.1039/c7py01370a

      巻: 8 ページ: 6378~6385

    • DOI

      10.1039/c7py01370a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanical and responsive properties of temperature-responsive gels prepared via atom transfer radical polymerization2017

    • 著者名/発表者名
      Norioka Chisa、Kawamura Akifumi、Miyata Takashi
    • 雑誌名

      Polym. Chem.

      巻: 8 ページ: 6050~6057

    • DOI

      10.1039/c7py01323j

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ポリシロキサン系高分子膜の構造設計と選択透過性2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 雑誌名

      日本ゴム協会誌

      巻: 90 ページ: 346~353

  • [学会発表] Smart Polymer Materials with Dynamic Crosslinks for Medical Applications2018

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      化学工学会第83年会,関西大学,吹田
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子ゲルの新たな世界 基礎から設計戦略,最新応用まで2018

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      第35回コロイド・界面技術シンポジウム~コロイド界面技術で広がるNext Stage~,化学会館,東京
    • 招待講演
  • [学会発表] 機能性ソフトマテリアルの魅力とゲル研究の最新動向2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      第8 回島津新素材セミナー2017【東京】驚異のソフトマテリアル~最先端の機能性ソフトマテリアル研究~,島津製作所,東京
    • 招待講演
  • [学会発表] Stimuli-Responsive Zwitterionic Polymer Particles and Capsules with Dynamic Crosslinks2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      3rd International Conference on Bioinspired and Zwitterionic Materials (ICBZM 2017), The University of Tokyo, Tokyo
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子ゲルの基礎と応用(入門編)~ワンポイントシリーズ「高分子ゲル」の行間を読む~2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      ゲルワークショップ イン 松山 -高分子ゲル研究の未来-,にぎたつ会館,松山
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子膜研究からソフトマテリアル研究へ ~構造と機能との相関に基づく材料設計~2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      第66回高分子討論会「高分子論文集」75 周年記念シンポジウム-ニューウェーブのその後の展開-,愛媛大学,松山
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子ゲル研究の最新動向と動的架橋を利用した設計戦略2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 学会等名
      高分子同友会関西勉強会,大阪YMCA国際文化センター,大阪
    • 招待講演
  • [図書] 高分子基礎科学One Point 第6巻 高分子ゲル2017

    • 著者名/発表者名
      宮田隆志
    • 総ページ数
      184
    • 出版者
      共立出版
    • ISBN
      978-4-320-04440-1
  • [備考] 関西大学 化学生命工学部 先端高分子化学研究室

    • URL

      http://www.chemmater.kansai-u.ac.jp/sentan/

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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