本研究の目的は、レーザースポット光の精密走査で、電荷(電流)の通り道を自由に動かすことのできる伝導体素子の検討である。光照射部だけに電流が流れ、その走査部は一時的な電気回路となる導線フリーの革新的な技術を目指している。具体的には紫外レーザーを用いたスポット光の精密走査により、絶縁体上の電極間に印加電圧をかけ、光照射による電流のOn/OFFや、スポット光の走査で電流(電荷)の動きを操るON/OFF回路形成を確かめることである。 本研究では、まず提案する光伝導の動作原理の解明と、無機材料化学に基づき選定した候補物質、光エネルギー貯蔵材料からベストな候補の選定を行った。またガルバノミラーを用いてレーザー細線の照射システムの作製を行った。透明試料の合成では、希土類Euを用いた蓄光機能を有する酸化物単結晶をフローティンングゾーン法を用いて様々な条件のもと作製し、その基礎光物性を検討した。次に試料上に電極を作製し、光照射により試料全体に流れる平均的な光電流値測定を行い、大きな光電流を獲得できる成分組成の候補を絞った。上記試料作製と平行して、光の細線を顕微鏡スケールの中で、自由に操作できるガルバノミラーレーザーシステムの構築を行い、それをクライオスタット 中で実験できる測定した。本研究では光の操作により形成される光-電気伝導回路の詳細な検討を行い、結晶方位と密接に絡んだ光伝導を観測した。本材料開発の挑戦提案は既知物質の利用でありながら光エレクトロニクスの未来材料になる可能性を示し、材料物性化学の純粋な学理と実用性を兼ねた非常に意義深い研究ができたと考えている。
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