研究課題/領域番号 |
17K19171
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
菅野 了次 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (90135426)
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研究分担者 |
平山 雅章 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30531165)
鈴木 耕太 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40708492)
小林 玄器 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 特任准教授 (30609847)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ヒドリドイオン導電体 / 酸水素化物 / 薄膜合成 / 固体物性 |
研究実績の概要 |
「ヒドリドイオン導電性酸水素化物の薄膜合成」を目的として、K2NiF4型酸水素化物ターゲットの合成および薄膜合成を行った。常圧合成法によって得られたLa2LiHO3をターゲットとして、パルスレーザー堆積法による薄膜合成条件を検討した。具体的には基板組成(結晶面)、製膜温度が形成する酸水素化物薄膜に与える影響を調べた。基本的な合成条件は基板温度600℃、製膜時間60分、レーザーエネルギー密度140 mJ/cm2、レーザー周波数10 Hz、アルゴン分圧3.0 Paに統一して、異なる基板上に合成を行い、X線回折測定により薄膜の相同定及び配向性を評価した。触針式膜厚計測により、得られた薄膜の厚さは50 nm程度であることが分かった。NdGaO3(100)単結晶基板上には114配向膜が成長することが明らかになった。また、不純物に帰属される回折ピークは観測されなかったため、La2O3やLi2Oなどへの分解反応は顕著に進行していないことが示唆された。Al2O3(0001) 単結晶基板上では、001および013配向した複数のドメインが存在することが分かった。基板法線方向に単一配向したLa2LiHO3膜が得られるNdGaO3(100)基板を用いて製膜温度の検討をした。合成時の温度を600℃から400℃に下げることにより、格子収縮が観測された。類縁組成である酸化物(La2LiO3.5)と本研究の狙いである酸水素化物(La2LiHO3)の格子サイズ関係を考慮すると、製膜中の水素欠損を抑制出来る可能性が示唆された。今後、組成分析により格子定数と水素含有量を調べることにより、相関を裏付ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄膜合成用の酸水素化物ターゲットは再現良く得ることができ、製膜実験のボトルネックの1つは解決された。また、基板法線方向に単一配向したLa2LiHO3膜も得られており、電気化学的な評価を行うための準備が整った。製膜中のアルゴン/水素比を精密に制御するための合成装置改良も進んでおり、二年度目以降の研究を円滑に進められる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
得られたLa2LiHO3薄膜の電気化学特性評価、組成分析を進める。合成条件と、薄膜中の水素含有量、さらにはイオン導電率との関係を明らかにする。具体的には、ターゲット組成、合成分圧を制御することで、様々な水素含有量を実現する。合成条件の最適化を進め、結晶配向の制御、水素含有量の制御、格子歪みの導入といった検討を行い、多結晶粉末とは異なる薄膜特有の物性発現を目指す。
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