研究実績の概要 |
近年、フッ素ガスを用いた研究が農薬、工学分野などで注目されており、工業的、および研究室レベルでの需要も高まっている。しかし、フッ素ガスには安全性 や関連する法規制の問題から大量に購入、保管することが難しいという問題点がある。現在のフッ素ガスの製造はK[(FH)2F]溶融塩(融点: 71.7°C)を約90°Cに おいて電気分解することでアノードから得られる。この方法では電気分解の際に稼働温度が高いため、昇温装置や、アノードとカソードからそれぞれ発生する フッ素ガスと水素ガスの圧力調整等が必要になり、装置が大型化してしまうため、研究室あるいは小規模な工業レベルでのフッ素電解製造は難しい。そこで我々 は、小規模なフッ素ガス製造法の開発を目的とし、電解液にCs[(FH)2.45F]を用いたフッ素ガス電解製造法を提案している。Cs[(FH)2.45F]は融点が低い(融点: 16.9°C)、HFの解離圧が低い、電気伝導率が高いなど、コストを除けばフッ素ガス製造の電解浴として優れた性質を示す。さらに、電解液にCuF2を溶解させるこ とで、カソード反応を水素ガスの発生でなくCuF2の還元による金属銅の析出とすることができる。それにより、フッ素ガスと水素ガスの混合の可能性は極めて低 くなり、安全上有利であるとともに、装置の小型化が可能である。現在までに小型セルでの試験で、予備電解後の電解で、純度98%のF2を得ることに成功した。主な不純物はO2,OF2,CO2などであり、脱水電解などによる浴中の水分除去が重要であることがわかった。K[(FH)2F]溶融塩電解時に見 られる、電解電圧の急激な上昇とともに電流が流れなくなる、いわゆる陽極効果の発生は本系では観測されなかった。
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