研究課題/領域番号 |
17K19181
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 美穂 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (10372749)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | 水素吸蔵 / ナノカプセル / パラジウム / 金属有機構造体 |
研究実績の概要 |
金属水素化物は温和な条件で水素を吸蔵するが、“重い”という弱点のため、定置形の用途にのみ利用可能である。空隙密度の高い多孔性材料は水素の重量当たりの吸蔵量は大きいが、液体窒素温度や10 MPa以上の“低温・高圧”条件を必要とする。本申請研究では、水素と媒体の化学的相互作用と物理的相互作用の両方を利用することで水素を比較的高温(-20 ℃以上)で凝集(or液化)して貯蔵する金属ナノカプセルの作製を行う。金属水素化物は温和な条件で水素を吸蔵するが、“重い”という弱点のため、定置形の用途にのみ利用可能である。空隙密度の高い多孔性材料は水素の重量当たりの吸蔵量は大きいが、液体窒素温度や10 MPa以上の“低温・高圧”条件を必要とする。本申請研究では、水素と媒体の化学的相互作用と物理的相互作用の両方を利用することで水素を比較的高温(-20 ℃以上)で凝集(or液化)して貯蔵する金属ナノカプセルの作製を行う。 本年度は、水素吸蔵特性が認められている多孔性金属有機構造体(MOF)であるMIL-101に、アークプラズマ蒸着装置を用いてPdナノ粒子を配位高分子上に担持させることにより、MIL-101内包Pdナノカプセル(MIL-101/Pd-NC)の作製を試みた。TEM-EDSで得られた元素マップから、Pdを45万発照射した試料のSTEM像と元素マッピング図を見ると、一部のMIL-101の結晶はPdによりその表面を覆われていることがわかった。したがって、アークプラズマ蒸着法によりMIL-101を内包しているPdカプセルが作製されたことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、水素吸蔵特性が認められている多孔性金属有機構造体(MOF)であるMIL-101に、アークプラズマ蒸着装置、アルバック理工:APD-2Pを用いてPdナノ粒子を配位高分子上に担持させることにより、MIL-101内包Pdナノカプセル(MIL-101/Pd-NC)の作製を試みた。作製したMIL-101/Pd-NCの粉末XRDパターンは、MIL-101のパターンを保持していることから、アークプラズマ蒸着法によりPdをMIL-101に蒸着させても、その構造は変化しないということが明らかになった。また、作製した試料の形状や金属元素の分布状態を見るために、走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(STEM-EDS)を行った。STEM-EDSで得られた元素マップから、Pdを10万発照射したものでは、Pdの粒子間に隙間があり、MIL-101をPdで完全には覆えていないということがこのSTEM像と元素マッピング図からわかる。しかし、Pdを45万発照射した試料のSTEM像と元素マッピング図を見ると、一部のMIL-101の結晶はPdによりその表面を覆われていることがわかる。したがって、なお、ICP測定によって得られたPdの担持量は、それぞれ5.73 wt%、33.6 wt%であった。アークプラズマ蒸着法によりMIL-101を内包しているPdカプセルが作製されたことがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、作製したMIL-101/Pd-NCの水素吸蔵特性を調べるために、~10気圧、-50度~での水素圧力―組成等温線(PCT曲線)を測定する。また、放射光を使った水素圧力雰囲気における粉末XRD測定を行うことで、MIL-101/Pd-NCの水素吸蔵による構造変化を追跡する。さらに、ZIF-8を内包したPdカプセル(ZIF-8/Pd-NC)を作製し、その水素吸蔵特性を調べる。MIL-101/Pd-NCとZIF-8/Pd-NCの水素吸蔵特性を比較することで、内包構造体と水素の相互作用がPdカプセルに与える影響を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおよそ計画に沿って予算を執行したが、消費税などによって止むを得ず、予算額と執行額にわずかながらの誤差が発生した。残余額は来年度の消耗品の購入に使用する予定である。
|