金属イオンと架橋配位子が自己集積して形成される配位高分子(MOFまたはPCP)は、設計性と物質多様性に優れた新たな多孔性材料として、分離・貯蔵・触媒など様々な用途での応用が期待されている。近年、気体吸蔵や触媒反応において、金属-配位高分子間の接触界面における電荷移動や分子篩効果などを利用し、これら物性の向上を目指す研究が盛んに行われている。本研究では、金属-配位高分子間の接触界面を利用した新たな物性発現の探索を目的とし、金属-配位高分子複合体を用いた水素吸蔵特性の探索を行うことを目的とする。配位高分子はその細孔内に水素を高密度に吸着することが知られているが、室温に近い温度での水素吸蔵を実現するには、水素とより強く相互作用する部位の導入が必要である。本研究では、アークプラズマ蒸着法を用いて、水素を温和な条件で解離・吸蔵することで知られるPdを配位高分子に被覆することにより配位高分子内包Pdナノカプセルを作製し、その水素吸蔵特性の探索を行った。 水熱合成法によりMIL-101を作製し、アークプラズマ蒸着法によりMIL-101粉末にPdを蒸着させることで、PdをMIL-101結晶表面に担持したPdナノカプセルを作製した。走査透過型電子顕微鏡(STEM)および、粉末X線回折(XRD)測定により、試料の形状、Pd原子の分布、および結晶構造を調べた。高圧ガス吸着量測定装置を用いて、水素圧力組成等温線を測定した。また、水素雰囲気下での核磁気共鳴(NMR)測定および電子スピン共鳴(ESR)測定を行い、吸蔵された水素の状態を評価した。
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