研究実績の概要 |
本研究課題ではケイ素原子に対して多座配位をとれるような有機配位子を利用することで、一般に不安定とされる5配位や6配位状態の高配位ケイ素を構造単位とした新しい多孔質材料の合成法を確立することを目的としている。本年度は、多孔質骨格中で高配位ケイ素を安定化させることができる合成条件の検討を中心に行った。 1. 高配位ケイ素を構造単位とする三次元構造体の直接合成 テトラエトキシシラン(ケイ素源)と2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン(HHTP)をエタノール溶媒中、トリエチルアミン存在下90℃で1日加熱撹拌することで、トリエチルアンモニウムをカウンターイオンとして6配位ケイ素がHHTPで架橋された三次元架橋体(Hc-HHTP)の合成に成功した。また、同様の条件で1,4-bis(triethoxy)benzene (BTEB)をHHTPと反応させた結果トリエチルアンモニウムをカウンターイオンとして5配位ケイ素がHHTPで架橋された三次元架橋体(Pc-BTEB-HHTP)を合成に成功した。 2. 高配位ケイ素ビルディングブロックの合成 テトラエトキシシランと5―ヨードサリチル酸をN,N-ジメチルホルムアミド –メタノールの共溶媒中、NaOMe存在下、室温で1日静置することで、Na+をカウンターイオンとしてSiに対して三個の5―ヨードサリチル酸が配位した6配位ケイ素化合物(Hc-ISA)の合成に成功した。Hc-ISAは終端のヨウ化アリールの反応性を活かすことで高配位ケイ素化合物同士を連結させることが可能であると考えられるため、高配位ケイ素多孔体を設計するためのビルディングブロックとしての利用が期待できる。
|