研究課題/領域番号 |
17K19186
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
宮川 仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (40552667)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 高圧プロセス / 構造相転移 / 機能性セラミックス |
研究実績の概要 |
対象物質としては、化学的に安定であり、電気的良絶縁体として代表的な酸化物であるAl2O3を選択し、C型希土類型構造への構造相転移を目指した研究に取り組んだ。第一原理計算を利用し、α- Al2O3、θ- Al2O3、、C型希土類型構造のAl2O3において、それぞれ0~20 GPaの圧力領域での構造安定性を評価することを行った。結果、全圧力領域に渡り、α- Al2O3が最も安定な構造であったが、θ- Al2O3とC型希土類型構造Al2O3では、低圧力領域ではθ- Al2O3が安定であるが、高圧力領域ではその安定性が逆転し、ターゲットとしているC型希土類型構造が安定になることがわかった。つまり、θ- Al2O3を高圧力領域で処理することで、C型希土類型構造へ転換し、準安定相として得られる可能性があること、がわかった。 上記、理論計算による結果を考慮し、高圧下で準安定相が回収される可能性のあるプロセスとして、非平衡プロセスである衝撃圧縮プロセスを選択し、出発原料であるθ- Al2O3を処理することでC型希土類型構造へ転換することを試みた。圧力は飛翔体の速度を変えることで10~20 GPaと変化させ、試料の充填密度を変えることで、衝撃圧縮時の試料温度上昇を変化させた。10 GPa、15 GPaで処理した試料は、元のθ- Al2O3を維持した状態で回収された。一方、20 GPaで処理後、回収した試料は、XRD測定よりα- Al2O3へ構造転換したことが認められた。発生圧力の増加に伴う、衝撃圧縮時における試料の瞬間的な温度上昇が、この相転移の主な原因として考えられるため、より精密な温度制御が可能な、静的圧力発生装置での処理が好ましいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論計算より、ターゲットとしている構造を得るためには、圧力パラメータを利用すると対象構造が安定化される可能性がある、というアプローチに関する示唆が得られたこと。またその為に回収実験を進捗させており、可能なプロセスかどうかの検証を順調に遂行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
静的圧力発生プロセスを適用することで、溶融状態からの急冷による準安定相の回収と低温でのアニール処理、2つのルートからターゲット構造の合成を目指す。そのために、2000℃以上の高温下でも安定に使用できる高圧セルの開発も進める。また、高温プロセスでは、現在用いている黒鉛ヒーターから試料中へのカーボンの混入が懸念されるため、ヒーター材の種類を検討し直すことも進める予定である。 その他、合成実験では、ペロブスカイト型関連物質への高濃度欠損導入による高イオン伝導体探索も行う。ダブルペロブスカイト型構造をとるCa3WO6を基点物質に、CaサイトをK、Liなどの一連のアルカリ金属イオンで置換した誘導体の合成を試みる。並行し、イオン伝導度の評価に必要な装置の構築を進めることで、高い酸素イオン伝導性を有し、かつ動作温度が低い物質、かつ化学的に安定な物質の探索を進める。また、高温高圧下で焼結、回収した試料を常圧下でアニールした時に、試料内の構造緩和等が電気特性に顕著な影響を与えるかの有無も検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
誤差額は1000円未満のため、使用計画に大きな変更はない。
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